弱点はここです
動物には必ず弱点がある
だからある者は爪が発達し、またある者は猛毒で身を守る
そして弱点は決して一つではない
動物なら(特にイヌ科だが)殆どが共通で持っている弱点
鼻だ
百獣の王、ライオンも例外ではない
「うぶっはぁ゙!!」
「…」
「…ドカスが…ぶしゅっ!」
ゴミ箱から溢れかえった無造作に丸まった白いモノ
一時間前に中身を捨てた筈のゴミ箱は既に限界を訴えていた
ボスはいつにも増して不機嫌だ
あー、今日は多いんだな
「おい、ベル」
「…そろそろ無くなると思って持ってきたよ」
「上出来だ」
「…なんか複雑」
ルッスに渡されたティッシュボックスをボスの前に差し出すとグシャグシャと頭を撫でてくれるボス
嬉しいんだけど、目は涙で潤んで、鼻は赤くなって、今にも鼻水が垂れそうだ
そう、ボスをこんなにも追い詰めて居るのは今が盛りのアレ
花粉だ
「…へぶしぃっ!」
「ボス大丈夫?」
「大…っ、丈夫だ」
「(あ、今我慢した)」
3月の半ば位から始まったボスの花粉との戦い
イタリアには花粉対策のモノがあまりないからボスが花粉症の症状が出始める前後にジャッポーネで任務があった幹部が対策グッズを大量買いする事になっている
前にムッツリが買ってきた鼻に貼るとスースーして眠れるってヤツは効果があまり無くて酷い言われようだった
「そいやさ、ジャッポーネにこんなんあったから買ってきてみたんだけど」
「あ゙?」
「ティッシュボックス」
「…テメー今持ってきただろ」
「いや、その普通のティッシュじゃなくて…えっと、なんだっけ?」
「…知るか」
「ほら、普通のより柔らかくて鼻の下痛くならないんだって」
動物の顔がドデカく描かれているティッシュボックスを見せるとボスは眉間にシワを寄せて睨んできた
うわっ、マジ不機嫌
まぁ俺だってこのティッシュなんか気休めだって事位分かってるけどさ
「使ってみなきゃ分かんなくね?」
「…」