恋愛事情





帰りの電車
帰宅ラッシュで混雑した車内では体を動かす事もままならない
扉付近に立って音楽を聴きながら携帯を弄っていると何となく嫌な感じがした

何だコレ

太股の内側を動く何かゾワゾワした感覚が体中を走り抜けた

これって

気持ち悪さに体が震える
何とか体を動かして逃げようとした瞬間聞き慣れた声が飛んできて太股を撫でていた手が無くなった





「うちの可愛い生徒に手ぇ出すなぁ」


















「大丈夫かぁ?」
「全然へーき」


痴漢事件の後、駅員室で警察の人といろいろ話してから家に帰る様に言われた
親の縛りなんか受けたくなくて高校から始めた1人暮らしだけど何だか寂しく感じてたまたま最寄り駅が先生と同じで家にお邪魔する事になった


「平気なら家帰るだろぉ」
「…晩御飯作るのが嫌になったの」
「あ゙ー、そうだなぁ」


料理は面倒だ、面倒だと繰り返しながらコンビニ弁当を温める先生
この人26だよな?


「先生さー」
「ん゙?」
「女居ないの?」
「居ねぇ、テメーこそどうなんだぁ。現役女子高生」
「なんか先生が言うとセクハラ発言に聞こえる」
「なぁ゙っ」

「俺も先生と一緒だよ」


釣り合う男が居ない
ヘニャヘニヤな男なんか有り得ない
束縛されんのだって嫌
下心があるヤツばっか

散々な言いように先生は苦笑いしながら温めたパスタを持って来て俺が座っているソファーに少し間を開けて腰を下ろした


「でもよぉ、恋をすんのはいい事だぁ」
「女居ない先生が言っても説得力ない」
「俺だって好きなヤツは居るぞぉ」


パスタを頬張りながら言う先生の言葉に胸が苦しくなる理由が分からなかった
手元のパスタも何だか薄っぺらいモノに見えてくる


「どうしたぁ?」
「…いらない」
「あ゙?」
「もう寝る」
「寝るってお前…」


ソファーの端っこで足を持ち上げて縮こまると先生のちっちゃな呟きが聞こえた




どうせ面倒くさい餓鬼ですよーっだ






恋愛事情

(聞くんじゃなかった)



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