温くて温かい





本当、ムカつく
なんで俺がこんな事


「ねー先生、俺先生キライって言ったよね?」
「お゙ぅ」
「んじゃ俺にやらせないでよ」
「お前問題児なんだろぉ?」


しっかり目ぇつけとかねぇとな
なんて言いながらその内ホームルームで配られるであろうプリントをコピーする先生
そしてそれに枚数ごと付箋紙を付ける俺


「こういうチマチマした作業苦手」
「俺もだぁ」
「独り言だから反応しないでよ」
「イライラするしなぁ」
「聞いてない」


俺の言葉なんか気にしない先生に余計ムカついてきて
あー、もうヤダ
さっさと終わらせよっ
ペッペッと手早く付箋を付けていく
いつの間にか先生も何も喋らなくなって静まり返った空間が無性に苦しかった


「っあぁぁぁー!」
「ほらよぉ」


どうにもこうにも耐えられなくなってダンっと机を叩いて声を上げると不思議そうな顔をしながらコップを出してきた先生

え、何これ


「随分集中してたなぁー」


一服しろ

と渡されたコップからはうっすら湯気が立っていて白くて


「…」
「んだぁ?好きなんだろぉ、牛乳」


何でんな事知ってんだよ
こんなモン出すなよ眠くなんじゃん
つかいつ作ったんだよ

睨み付ける様に先生を見ても先生は自分用に淹れたであろう苦そうなコーヒーをただただ味わうだけで

ダメだ、なんか振り回されてる


「はぁ…」
「飲まねぇのかぁ?」
「別に」
「冷めたら旨くねぇぞぉ」
「余計なお世話」


俺は早く帰りたいんだ
ここでゆっくり付箋貼るよかさっさと終わらせて家に帰りたい
何が楽しくて放課後に先生と作業しなくちゃいけないんだ

コップの存在をスルーして作業を進めていくとふと、温かい声が頭の上から降ってきた


「何が問題児だぁ。随分いい子じゃねぇかこんな雑用引き受けて」
「お…俺は別に」
「成績も優秀だし、まぁ遅刻に授業態度は少し問題だけどなぁ」


いつの間にか出来るのが当たり前で褒められるなんて久しぶりだった
なんだか妙に擽ったくて脇に置いたままにしていたホットミルクを一気に飲み干した


「…先生」
「あ゙?」
「俺、温かいのならココアのが好きだわ」
「…お゙ぅ、覚えとくなぁ」






飲み干したミルクはもうだいぶ温くてイマイチだったけど
ほんのり甘くて、
何故か胸が温かくなって

少しだけ先生を見直した




温くて温かい

(なんだよ、この感覚っ)



Back