殴るなら思いっきり





一目惚れなんてないと思ってた

そんなのは恋を綺麗に見せかける為の言葉で実際はそんな事なんかないのだと
だから、アイツと逢った時は心臓が飛び出てしまうのではないかという位驚いた




「ちっ…赤点ギリギリの奴多すぎだろぉ」


職員室の自分の机に座って出席番号順に集められたテストにバツばかりをつけながら思わず口から出た

極端に難しく作った訳じゃないんだがなぁ

とりあえず、誰も居なくて良かった
ベルとの事があってからというもの他の教師からの視線が痛い
俺の言動が全て見張られているような気がして居づらい職員室
今の発言も聞かれていたら『汚い言葉を使うな』、『生徒が真似をする』と言われただろう

アイツ等ももう充分汚い言葉使ってんだろうと思うのは俺だけなのかぁ?

理事長や校長と話した結果、ベルとの関係を断ち切る事を条件に俺の退任とベルの退学処分は無くなった

「ってかコイツ等補習にならない程度に勉強してんのかぁ?」


43、40、51…
39点から補習決定なのだが点数自体は良くない奴等ばかりにもかかわらず補習の奴は1人も居ない
逆にすげーな

3年の学年末なんて対して成績には響かないしセンター入試の奴は学校の勉強なんかしているどころでもない
所詮はそんなもんか


「おぉ、あの蛙はまぁまぁだなぁ。以外と勉強してんだなぁ」


強烈な印象を与える蛙の帽子を被る生徒
インパクトばかりがデカくて頭の中身はまぁ若干弱いんだろうと思っていたが学年の中では上の中といった所か
暫くぶりにこんなに丸つけたぜぇ

解答用紙に用意しておいた四角い枠の中に点数を書いて名簿にもチェックを入れる
次の採点を付けようとプリントを少しずらすとすごく綺麗とは言えないが丸い、可愛らしい文字で書かれた名前


「ベル…かぁ」


久しぶりに口にした名前に心臓が軋むのを感じた
ベルなら点数は安心だなぁ










と油断していた俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けるのだった





「っんだこりゃぁ゙!!」





殴るなら思いっきり

(油断大敵)




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