愛しい背中





先生の家にお邪魔して数日

世間はクリスマス、クリスマスはしゃぐリア充で溢れてる
寒くてスカートを履いてる女の気が知れない
コートでモコモコするし
だから、だから出掛けたく無かったのに


「あー、もうっ、ウザイ」


スキニーパンツの裾から冷たい風が入る
見た目的にコートのボタンも閉める気にもなれない
可愛い服だって持ってない
てか似合わないし
それでも出掛けようって思ったのは、あの人から呼ばれたからで…

待ち合わせの定番
駅前のクリスマスツリーの下
1人ベンチに座る姿を見つけた


「せんせー?」
「ん?おぉ゙、来たかぁ」
「…待った?」
「待ってねぇ」


嘘、鼻赤くなってる
いつから待ってたんだよ
鞄を肩に掛けて、ポケットに入れたままにしてた両手で先生の顔を包んであげる

冷たい


「んだぁ?」
「別に、先生が凍え死にそうだから」
「死なねぇよ、行くぞぉ」


グイと引っ張られた手はやっぱり冷たくてゾクッとした
これ、握り返していいの?
「ねぇ先生、何処行くの?」
「その先生ってやめろぉ」
「え?」
「変な目で見られんだろうがぁ」
「でも何て呼べば…」
「俺の名前知らねぇかぁ?」

「スクアーロ…せんせい」
「それでいい」
「え?」

「スクアーロでいいぞぉ」
「スク、アーロ」
「んだぁ、ベル」
「…呼んだだけ」


ニッて上がる先生の口角
なんだよ、なんか文句あんの?
てかさ、


「何、その眼鏡。インテリ目指してんの?」
「変装だぁ変装。生徒と教師ってバレたらマズイだろぉ」


まぁ確かにそれはそうだ
マズイに決まってる
疾しい事は無いにせよ、マズイ

けど、変装になってない気がする
眼鏡かけた位じゃダメだろ
変装ってんならまずその長い髪をなんとかしろよ
自信満々で言ってのける先生が理解出来ない
どこから湧いてくんだよその自信は


「ゔぉぉい、さっさと行くぞぉ」
「えっ、だから何処に…」
「ツリーだ、ツリー」

「は?」


グイグイ引っ張られるから小走りで付いて行く
自分勝手な奴
ちょっとは俺の歩幅考えろよ


「せんっ…スクアーロっ、早いっ!」
「早くしなきゃ店閉まっちまうだろうがぁ」
「あー、もうっ、本当意味分かんないっ!突然なんなんだよ」

「良いからついて来い」
「スクアーロなんか嫌い!」
「嫌いで結構だぁ」
散々文句を言っても
それでも冷たくなった先生の手を握り返さずには居られなくて

見慣れた長い銀の髪
広い背中が無性に愛しく感じた







「ムカつくムカつくムカつくムカつく」

「うるせぇぞぉ」
「ねぇ、スクアーロ」
「あぁ゙?」











「…、俺、スクアーロの事好き、みたい」

「ん?何か言ったかぁ?」
「何でもない!」





愛しい背中

(本当は好きなんだよ、素直に言えないだけ)





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