好きな人に抱きしめられることはとてもうれしい。私のそれよりしっかりした腕が背中に回されて、しっかり、けれど痛くないように。その絶妙な力加減で抱きしめられると、ああ大事にしてもらっているんだなとわかるから、日々の当たり前になったその行為が、けれどとても大切で特別なのだと思う。
「そういや、天が今日はハグの日だとか何とか言ってたな」
 ふと思い出したように呟いて、楽さんは「ならいつもより多くハグしておくか」と、いったん離れた腕をもう一度私の背に回す。あ、なんて情けない声を漏らした私に、楽さんは「どうした?」と問いかけて。
「……えっと、ハグの日……あ、語呂合わせですか?」
 八月九日で、ハグ。答えている間にも、しっかり背中に回された腕をどうにも意識してしまって、なんだか急に恥ずかしくなる。いつもならいい匂いだなとか、暖かいなとか、そんなことばかり考えるのにそんな余裕もなくて、抱きしめ返した手のひらは楽さんのシャツをきゅっと握っている。
「けど、その……、ハグの日って改めて言われると、なんだかちょっとこそばゆいような、なんというか……」
「……、ふ、なんだよそれ」
「わ、笑わないでください……!」
 きっと今の私の顔、タコみたいに真っ赤なんだろうな。そう思うと隠したくて仕方ないけれど、あいにく両手は空いていなくて。かわいい、と言って笑った楽さんにいよいよ耐えきれなくなった私は楽さんの胸元に顔を埋めるしかなくて、仕方がないから私を受け止めるそこに思い切り頬を擦り寄せてやり過ごすことにした。
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