僕の肩に頭を預けて、すうすう寝息を立てているその子は、さっきまで「絶対にいちばんにレンにおめでとうを言うの!」と息巻いていた。十二時ぴったりを示すデジタルの時計は電波式だから、狂っているなんてことはない。
「……うーん。嘘つきですねぇ……」
重力に従って流れるその髪を梳くと気持ちよさそうに笑うものだから、ひとりで拗ねているのが不毛に思えてくる。今から今日の主役になった僕を放って寝ちゃうなんて、随分フリーダムですね。そんなことを言ったって、夢の中の彼女には届かない。
「仕方ないですね。朝になったら、いちばんにおめでとうって言ってもらいますよ」
最後にひとつ頭を撫でて、彼女の身体をそっと抱える。眠気に勝てなくて先に寝てしまうのも昔から変わらないまま、軽い身体も昔から変わらないまま。目を覚ましてから必死に謝ってくるであろう彼女の姿を想像して、何を言って遊んであげようかを考えるのが楽しいのも、昔から変わらないままだ。
変わらない僕たちはきっとこれからも変わらずに年を重ねていくだろうから、今年の誕生日は許してあげます。これはきっと、惚れた弱みというやつかもしれないな。僕がそんなことを思っているなんて知りもしないで、彼女は僕に抱えられながら幸せそうに表情を綻ばせた。