「いつも思うんだけど……」
「なんでしょう」
「普段は温厚な巳波くんがこんな攻撃的な曲作れちゃうなんてすごいよね。うまく言えないけど、全然違うからびっくりするし、どきどきする。すごい」
「……あのね、ナマエさん。私の作った歌には、本当の私が潜んでいるんですよ」
「本当の巳波くん……? うそだ、巳波くんは優しいもん」
「ええ、あなたには。誰にでも噛みつくなんてことはしません。けれど、慈しむような視線で見つめながら、獲物が気を許した瞬間に丸飲みにしてしまうようなことだってありますよ。牙も爪も、普段はひた隠しにして、ここぞという時にだけ使うんです」
「そうなの? じゃあ私のことももしかして……」
「あなたにはしません、決して。ナマエさんは、いくつもの顔を持っているような男はお嫌いですか?」
「えっ、うーん……。巳波くんは、嫌いじゃない……」
「ふふ、好きと言ってくれなきゃ、だめ」
「……! す、すき……」
「私も」