*どちらも普段ツイッターでつぶやいている設定のお話です
*名前変換なし
◯貴方は(巳波くんと夢主)で『三時の雨宿り』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517 より
帰ろうとしたら、雨が降っていた。
午後はにわか雨が降るかもしれないと朝の天気予報で見たのを思い出しながら、鞄の中を探る。たいして物が入っているわけではないそこから折り畳みの傘を取り出すのは簡単だった。
けれど、「うわあ」と声を上げたその人はそうではないようで。普段とは違って私には目もくれず、空から降る透明な糸くずを見つめている。降ってる、と小さく漏らした彼女に、気づけば言葉を投げかけていた。
「にわか雨ですよ。見ていないんですか、天気予報」
「うん。見るの忘れちゃった」
「そうですか……」
あとには雨の音。私たちは、彼女が浮ついたことを言わなければろくに会話も続かない。今、隣に立っているこの人は、私のことよりも傘を持っていないことを案じるので忙しいのだ。付き合って、なんて言われる気配もない。
「雨宿り」
「ん?」
「止むまで、雨宿りならお付き合いしますよ」
傘を鞄に戻しながら告げる。傘に入れましょうか、だなんて絶対に言わない。彼女のために左側の肩を濡らすなんてごめんだし、彼女が半身を濡らしては隣を歩く意味がないから。小さな傘は、他人どうしが隣合う上では無用の長物だろう。
ありがとうと微笑って、再び彼女は沈黙する。互いに話すことは何もなくて、雨が弱まるのをただじっと待った。
時間は午後三時。帰ったら、今日のティータイムは四時を過ぎるだろうか。たまになら悪くないから、彼女を置いてひとりで帰ることは、しなくていい。
◯貴方は(巳波くんと夢主)で『オフレコ』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517 より
マスコミの方から、恋人の存在を探られることがある。私の職業を考えれば当然のことだ。
御堂さんとは違って、私にはそういう相手はいない。世間的なイメージも「いない」寄りだと思う。もしもそんな相手がいたとしたら、それが周りに知られたら、少なからず騒ぎになるだろう。
――あの人のことも。
付き合っていないとはいえ、妙な女性につきまとわれているなどと騒ぎになればとても面倒だ。彼女だって無傷では済まない。
「私は気にしないよ」
「私が気にすると言っているんですよ。事務所内ならまだいいですけれど、外で妙なことは言わないでくださいね」
ぴしゃりと言い渡すと、彼女は「まあ、巳波くんアイドルだもんね」と納得した様子だ。
「そうですよ。だからあなたとのことは、何もかもオフレコです」
「オフレコ……芸能人っぽいね!」
あはは、と笑う様子はまさに能天気だ。はあ、とため息をつかずにはいられない。
それらしいことを言えば、もう少し彼女の心にも響くのだろうか。私たちの関係はふたりだけの秘密ですよ、なんて。私たちはそんな間柄ではないから、胸のうちに留めておいた。