レンが、怪我で試合に出れなくなった、と噂が広がった。足をくじいてしまって、エースがいなくなってしまった今、サッカー部のメンツは絶望的な顔しか浮かべていない。
原因は、私だ。






私とレンは幼なじみだったけど最近付き合いはじめて、昨日、私はチアリーディング部の練習が終わったから、校庭でレンを待っていた。試合は来週で、だから選手達も練習にいつもより熱が入っている。私はレンを見つけた。金色の髪は秋なのに汗で濡れていて、それが夕日に煌めいている。すごくかっこよくて、見とれてしまった。だから、気づけなかったんだ。
「鏡音! 伏せろ!!」
「え……?」
クラスの男子が苗字で呼ぶ。レンも『鏡音』だし、私だとは思わなかったんだけど、気づけば私に向かってボールが飛んでいる。ぶつかる、と思ったら体が傾いた。
地面に頭をぶつけないように、私の頭を包んでくれる、少し大きな手。そのおかげで痛くなかったけど、私の視界の右端に、知っている金色が見えた。
「リン、大丈夫か?」
レンが体を起こし、私に問い掛ける。私の体は地面に転がってて、レンの手は私の顔の隣においてあって、レンの顔が夕日が真後ろにあるせいで見えにくい。どうやら私はベタな庇われ方をしたらしい。いや、このアングルから見るとレンいつもよりかっこいい。………じゃなくて。
「う、うん。」
「本当に? 痛いところ無い?」
「大丈夫だよ。」
そういえばほっ、とレンが息を吐いたのがわかった。
「そっか、よかった………っ!」
レンはそう言いながら立ち上がろうとしたけれど、急に顔を歪めてうずくまった。私は驚いて、起き上がってレンの名前を何度も呼んだ。起き上がったときに、あることに気づいた。
足首を、押さえている――?
「レン! どうした!?」
心配になったのだろう。チームの先輩が走ってきた。続いて同期の人達もやってきた。
「足、やっちまったかも……。」
「え…。」
私が驚いてるのをよそに、レンはもう一度立ち上がった。レンの顔は何だか辛そうで。チームの人達は止めるけど、レンは怪我しているらしい方の足を地面につけた。次の瞬間。
「っ!」
「レン! きゃあ!」
レンの体が傾いて、助けようとしたけれど私の力が無かったらしくそのまま倒れてしまった。
「レン! 何でこんな無茶……!」
「ごめん。リン、痛いところはない?」

苦しそうな顔で、レンが私に問い掛けた。レンが一番痛いはずなのに、いつも私の心配を先にする。どうして。立てないくらいに痛いのに。
「鏡音君!」
サッカー部のマネージャーがやってきた。レンを助け起こそうとしたけれど、レンはそれを拒んだ。
「リン、ごめん。保健室まで肩貸してくれ………。」
私の眼を真っすぐ見つめて、レンはそう言った。私のせいで怪我をさせてしまったから、肩を貸して良いのかわからなかったけれど、近くに行けば私の首にレンの腕が回された。なんだかマネージャーからの視線が痛いけど気にしないことにする。それよりこっちが優先。歩くのが精一杯のレンを支えるのは大変だったけど、これ以上怪我をさせたくなくて、必死でレンを支えつづけ、歩いた。

でも、養護の先生はお休みで、私が湿布を貼って、レンのお母さんに電話をしたらお迎えに来てくれてそのまま病院に向かったらしい。レンのお母さんは昔から知り合いだったけど、レンのお母さんは来た瞬間笑い出した。「ごめんねリンちゃん。馬鹿息子がドジでもしたんでしょ。」とか言い出す始末。私が「レンがかばってくれた。」と言おうとすると、レンは遮るように「俺が運動神経悪いからこけた。」とか言い出した。どうやら私の顔からしてレンのお母さんにはバレてたみたいだけど、レンのお母さんは何も言わずに、折角だから、と私を家の前まで送ってくれた。
私の家はレンの家の隣。病院は反対方向。最初は断ってたけど、レンが「リンが歩くなら俺も歩く。」って言い出して聞かなかったので、仕方なくお言葉に甘えさせてもらった。ブレーキがかかる度に来る振動さえも今のレンには辛いらしくて、車に乗っている間ずっと眉間にシワが寄っていた。
私の家について、車から下りるときに、レンのお母さんにお礼を言ったあと、彼に言った。
「病院からの診断結果、真っ先に私に教えて。嘘ついたら一週間口きかないからね。」

その日の20時頃。レンからメールがあった。

『捻挫だって。全治3週間。俺、仮にもサッカー部なんだけどな…………。』











それで、今日に至る。レンは1時間目の途中から来た。病院に行ってきた、らしい。松葉杖をつき、右足首が包帯で固定されているレンはすごく痛々しくて、私のせいなんだと思うといたたまれなくなった。そんな彼と、今日もお昼を食べた。

お昼は、いつもは屋上で食べるけど、今日は教室で食べた。今回は、私のわがまま。わがままというか、レンに無理させたくなかっただけなんだけどね。
「…………レン、ごめんね。」
「何が?」
私がつぶやいた言葉に、心底驚いたような顔をしている彼を蹴りたくなったけど、怪我をしてるからそれはダメだ。
「怪我。私のせいで………。」
「なーんだ、そんなの気にしてたんだ。」
今度は私がきょとんとする番だった。レンは卵焼きを頬張りながら、少し恥ずかしそうに続けた。
「あんなんで怪我するなんて、サッカーやってけないよ。ゴールキーパーどんだけ頑張ってると思う??」
「………。」
うわ、何も言えない。確かに、ゴールキーパーすごいかも………。
「それに、情けないよ。」
「どうして?」
レンが、綺麗に笑った。
「だって、好きな女の子を怪我せずに助けられないなんて、格好悪すぎ。あと、」

レンの顔が私の耳元に近づく。それだけで私の顔は紅くなったのに、次の言葉できっと私は林檎になったと思う。

「………サッカーの試合に出るより、リンが怪我をしないほうが大事だよ」




そんな貴方が好きなんです
(心臓に悪すぎるの、なにもかも。)





あとがき⇒
どうしてこうなった。←終われ
と、いうわけで、きろ様の本当の相互記念リクエスト、
『イケレン×リンで、レンが大好きなリン』でした。
なのに!
なんだよこれ!!
イケレンかこれ!?
全然甘くもない!!
最後になんかレンがくさい台詞言っただけじゃん…………。
しかも挙句の果てに学パロになっちゃったよ…………。
うわーん(泣)きろ様、こんなんになってしまって本当に申し訳ありません………。
書いてて本当に楽しかったです^^
あぁ、リア充したい………(笑)←
もしよろしければもらってやってください←厚かましい
何度も言いますが、きろ様、本当にありがとうございました!!




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あああありがとうございます!
私のミスなのに、素敵な小説を二つも書いて頂けるだなんて。志音様はなんてお優しいだ…!
そして学パロリア充レンリン美味しく頂きました^^もう2828が止まらなかったです。
レンを心配するリンちゃん可愛すぎます!
ありがとうございました!



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