(微々えろ)


 神様神様、お願いします。もしも本当に存在するのであれば、教えてくれないでしょうか。こんなに苦しく辛い現実の中で生きる、という事の意味を。
 頬を伝う涙は誰かに助けを求めているかのように、儚くも床に染みを残していく。じゃら、じゃら。動く度に重たい鎖が擦れる音が鈍く響き、逃げる事は不可能なのだと再度理解する。両手両足に繋がれた鎖は複雑に絡み合い、ベッドの隅に一つに纏められては括られていた。ぎしり、ぎしりと床が軋む音がリアルに耳へと入り、その度に小さく肩を震わせる。
 どうして、どうしてこんな事になってしまったのだろうか。ぐったりとした身体は動かすのも億劫で、ベッドに横たわったまま虚ろな瞳で床を眺めた。


 十三日前の夜までは何も変わらなかった。お母さんの手作りアップルパイを口に含みながら、お父さんの笑い話に耳を傾ける。そして大好きな弟の冗談めいた突っ込みに声を上げて笑う、そんな幸せな毎日が続くと信じていた。信じていたのだが、それはアップルパイを全て食べ終えた後、彼が一言謝罪したその瞬間全てが崩れ去ってしまった。 勉強や運動もできて、学校でも人気の高い自慢の弟。友達もたくさん居るし、いつも無邪気な笑顔の彼はクラスの中心人物でもあった。だから初めは悪い夢かと思った、思いたかった。
 しかし現実というものは、あまりにも残酷で。思い出しただけでも、胃の中から胃液が逆流してしまいそうだ。どうやらレンの用意した飲み物の中に、市販の睡眠薬が入っていたらしく。先に眠った両親の首にロープをしていく弟の姿を、薄れゆく意識の中で微かに脳裏へと刻んでいった。

 気付いたらベッドの上で転がっており、自分の部屋とは違って綺麗に片付いたその部屋は、弟の部屋だとすぐに理解する。起き上がろうとするとジャラジャラと金属が擦れる音が響き、そこで漸く両手両足に鎖が付けられている事に気が付いた。
 訳の分からないこの状況にを理解するために、そのままベッドから降りて部屋からそっと抜け出していく。ギシギシと床の軋む音が煩く鼓膜に響く。階段をゆっくり降りて、真っ暗な廊下を進んでいけば、一つ灯りが零れている部屋が目に入った。
 リンはその部屋の扉に手を添えて、そっと扉を開けば絶句した。瞳が一気に開き、がくがくと足が震える。見てしまったのだ、レンが両親を天井に吊るし上げて正座で謝っている姿を。信じられないその光景に腰が抜けてしまったのか、思わずその場に崩れ落ちてしまった。
 がくがくと震える足が逃げる事を不可能にし、同じように殺されるのではないかという恐怖に、見開いた瞳から涙が滲み出てくる。そんなリンに気付いたのか、彼がリンへと視線を変えて。
 目と目が合った瞬間、彼は嬉しそうに微笑んだ。


 あの後すぐに部屋に連れ戻され、腕の鎖をベッドに固定されてしまった。何度抵抗しても外れてくれず、そんなリンに罰ゲームだと評して彼は突然リンの服を破り去った。弟の前で晒け出した裸を恥ずかしがる間も無く、何かを口移しで飲まされる。今思えば媚薬だったのではないかと推測する。
 そして数分間放置され、火照ってきた体に戸惑うリンに対して、彼は嬉しそうにパンツを脱がし始めた。とろとろに濡れてるね、なんて良いながらパンツに付いた愛液を美味しそうに指に絡めて舐めとる。
 どうしてこんな事をするのか、姉弟同士してはいけない事だとか、そんな意見を発しても彼聞き入れてくれず。突然彼が取り出した丸いバイブを数個、抵抗するリンをお構い無しに女性へと埋め込んだ。
 待って、という叫びさえ聞き入れてくれず、そのまま強い刺激がリンへと襲いかかる。媚薬で敏感になった体は、その刺激に耐えられず直ぐにイってしまった。それでも刺激は止まる事がなく、その姿をレンにビデオで撮影されている事に気を掛ける暇もなく、レンズ越の彼の前で何度も何度もイってしまう。

「何でこんな事をするか、分かる?」
「ひっ、ぁあんっ、やぁ……ひあぁあん、んっ」
「リンが好きだからだよ」


 彼が学校に行っている間は媚薬漬けにされたまま、固定されたビデオの前でバイブやローター等の玩具に犯されながら何度もイき、何度も潮吹いて。彼が帰ってくれば、痙攣を起こしながら気絶している事なんて殆どで。
 そのまま玩具を抜き取られた刺激に目を覚まし、彼に触れられただけで敏感にもイきそうになる。立つ事も出来ないリンにご飯を食べさせれば、風呂に行って体を洗ってくれる。そしてリンの部屋に連れられて、そのままベッドで眠る、そんな毎日を過ごしている。
 リンが自室で寝ている間、彼は何をしているかなんて知らなくて。それでも疲れきった身体は、死んだように眠りに付いていった。

 もういっその事、殺してほしい。何度願ったか分からない言葉は、口にする事なく消えていく。彼は一度も自分自身でリンを犯す事はなく、いつも玩具を使うばかり。彼の口から飽きるまで聞かされた好きという言葉は、本当に本物なのかさえ疑ってしまう程。
 ぐったりとした身体は悲鳴を上げ、泣き出すように沈んでいく。また今日が終われば、また地獄がやってくる。この日々に喜びを感じ始めたら、きっと堕ちてしまうのだろう。それだけは嫌なので、せめて、せめて。

「もう、死にたい」

 そう呟いた瞬間眠りに付いたリンは、扉の前で目を見開いているレンの存在に気付けないでいた。




これは修復不可能な人生選択肢




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ヤンデレン×リン
何だか本当に、すみません。
ヤンデレン君はリンちゃんが大好きすぎて、自分で触る事が恥ずかしくて出来ないので、玩具に頼りました。




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