ふと目が覚めた。
怖い夢を見たわけでもないのに、なぜか止まらない鼓動と荒い息づかいに目を彷徨わせる。ゆっくりと上半身を起こして数回頭を掻けば、そっと深呼吸。
胸に手を当てて、恐る恐る隣へと目を向ければ、自分と同じ黄金色の髪をした弟の姿。リンに背を向けて規則的な呼吸を繰り返す彼を確認すれば、込み上げる安堵感に溜め息がこぼれた。
時刻は午前三時。欠伸する事すら忘れて布団の中へと横になれば、彼との距離を縮めていく。
──こんなお姉ちゃんで、ごめんね。
心の中で小さく呟けば、そっと瞳を閉じた。

夢の中で笑う君は、いつまでその笑顔を向けてけれるのだろうか。"ずっと"や"一生"なんて曖昧な言葉で誤魔化すのも、今日で何度目になるのかすら分からない。
朝になれば、隣にある温もりが消えてしまう。暖かいはずの布団の中が、物寂しく感じてしまう。
弟のレンに、こんな感情を抱き始めたのはいつからだったであろうか。正確な日付だとか、きっかけなんて分からない。気付いたら好きになっていたのだ。
これがいけない感情だと言うことは、十分に理解している。それでも忘れる事ができないのだ、この気持ちを。
彼と部屋を別々にされた時は、まるで二人の仲さえも隔離されるような錯覚が湧き出てきて。どうしてという疑問は、両親の苦笑いで返された。

好きになってごめんなさい、それでも離れたくなくてごめんなさい。嗚咽が喉の奥から溢れてきて、思わず息を詰まらせる。
握り締めた手のひらは、何も掴む事はない。筈だった。
──え?
何も掴む筈の無かった手のひらに、小さな温もりを感じた。
布団の中を確かめなくても分かる。レンがリンの手を優しく握ったのだ。硬直する身体に、上昇する熱。目を開ける事すら忘れて、思わず息を殺した。
加速していく心拍数が、痛い程胸の内側を叩きつけていく。この煩い胸の鼓動が伝わっていないか不安に駆られながらも、ベッドが軋む音を耳で捉えた。
緊張に体を強ばらせ、小さく生唾を飲み込む。鼻の上に掠めた暖かい空気がくすぐったくて、リンは薄く瞼を開ければ。

「レ、レン!?」
「え! リン、起きていたのか?」

のスカイブルーの瞳に移った彼があまりにも近いので、思わず目を見開いてしまった。その距離は、鼻と鼻が付きそうな程。
リンが起きていた事に驚愕を隠しきれないレンは目を見開くが、その距離を離す事はなかった。鳴り響く心臓の音に、上昇する体中の熱。それは先ほどまでとは比べものにならない程、全身から熱を帯びていく。
いつからか彼が可愛い弟ではなく、一人の男として眼に映り始めて、今日で何日経ったのだろうか。これが異常な事だという事も、今となれば理解をしたくなくてもしてしまうのが現状で。
彼の隣に居られなくなる日がいつ来るのか分からない現実が、果てしない不安になって日に日に増していく。軋むベッドの音を聞きながら、リンはそっと腕を伸ばした。伸ばした腕でレンの頬をなぞれば、ぽろりと涙を一つ。

「レン……」
「ごめん、リン。今だけは……」

また、ベッドが軋む音がした。
揺れる瞳に映るのはレンしかいなくて、唇の柔らかな感触は確かに彼のもので。軽く触れた後、離れたかと思えばもう一度重なり、だんだんと深く沈んでいく。絡まる指と指は、離れる事を恐れているかのように強く繋がっていた。
誰もが寝静まった静寂な深夜。二人だけが知っているこの夜は、このまま秘密裏に時を刻んでいった。




この続きは二人だけしか知らない秘密事




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華南様、リクエストありがとうございます!
一応アドレサンスを意識してみたのですが、まったくアドレサンスっぽくなくなって、ただベッドでいちゃいちゃする姉弟になりました^^
この話の続きはタイトルの通り、二人だけの秘密事です。厭らしい意味ではない、と思います(笑)
近親もの大好物なので、書いていて楽しかったです!
ありがとうございました!



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