ざわざわと広がる無数の声が、まるで幾つもの音を重ねて出来た雑音のように聞こえる。右を見ても左を見ても名前も知らない顔ばかり。 ここは、とある公園のベンチ。静かに揺れる木々の下で、リンはゆっくりと日曜日の午後の空気を吸い込んだ。目線の先には幼稚園児くらいの子供達が三人、砂場で山を作ったりして遊んでおり、自然と口元が緩む。 そっと時計を確認すれば、ちょうど二時を三分進んだ時間。木々の隙間から太陽の熱がこぼれ落ち、じわじわと肌に突き刺さっていく。額に滲む汗を拭いながら、瞬き一つ。 リンは、揺れる木々を眺めながら、そっと瞼を閉じた。 今、どうしてリンは公園のベンチに、一人で座っているのかと言うと。理由は、特にない。あいて言うならば、この公園が好きだから。この場所は風も通っていて涼しいし、なんだか落ち着く。 なんて、そんな屁理屈を並べてみたはいいが、実際はもっと簡単な理由だ。そう、一つ年上の恋人を待っているのだ。 リンが今通っている学校は、中学生の頃から想いを寄せていた相手、鏡音レン先輩を追いかけて入学した。その頃はただ彼の姿を見るだけで幸せだったし、満足もしていた。 しかしそんな日常が崩れたのは、それから数ヶ月経った後。放課後、突然レン先輩に呼び出されて、告白されたのだ。初めは何かの冗談か、または夢かと思っていたのだが、そうではなかった。 彼と付き合うようになってから約一週間。 あまりの嬉しさに、一緒にいるだけで頭の中が爆発してしまいそうになってしまう。嬉しくて嬉しくて、それでも恥ずかしくて。いつも素直になれなくて、そんな自分に嫌気が差していた。 なので今日こそは素直になりたいと願い、部活で学校に行っている彼の帰りを待ち伏せしているのだ。それならば学校で待っていれば良いと自分でも思うのだが、それは何だか恥ずかしくて。彼が下校するときに確実に通る公園で待っている。 本当はもっと近付いて手を繋いでいたしい、彼への気持ちを素直に口にしたい。それは時々見かけるカップル達が羨ましくなってくる程。 込み上げてくる溜め息を、そっと吐き出した。そんな時だった。 「リン!」 「ぴゃっ!?」 突然背中から抱きつかれるように、衝撃が走ったのは。 リンは恐る恐る後ろを振り返れば、嬉しそうに微笑むレン先輩が目に映った。あまりの突然の事で頭がついて来てくれず、全身の熱が顔に集中していく。小刻みに震える口は、言いたい言葉を上手く吐き出せず。 密着した体は、暑い筈なのだが上手く脳内で暑いと認識できない程、ぐしゃぐしゃに混乱していた。 「待っててくれたんだ?」 あまりの図星の質問に、意表を突かれたように肩が跳ねる。鳴り止まない心音は耳障りな程、その激しさが静まる事がない。 昨日街で見かけたカップルのように、素直に寂しかったと抱き締め返したい。彼が困ってしまう程、全身全霊で甘えたい。なんて、そんな空想幻想を思い浮かべては、そんな事すらできない自分に失望する。 それでも、勇気を出して彼の言葉に頷こうと試みるが、出てきた言葉は可愛い気の欠片もない言葉だった。 「ち、違います! た、偶々ですよ偶々!」 「ははは、それでも嬉しいよ」 先ほどよりも強く抱き締める彼の腕が優しくて、優しくて。言いたい言葉とは違う言葉を吐き出してしまい、何度目が分からない後悔を胸の中に滲み出していく中で、彼のその優しさに甘えてしまう自分もいて。 彼が笑う度に、その息が耳元に掛かってくすぐったい。 今日は無理だったけれど、また明日や明後日になったら自分から素直な気持ちを言葉にする事ができるかな。 「ばーか」 そっと呟いた言葉はそのままレンの耳に入り、彼は先程よりも嬉しそうに微笑んだ。 真っ赤に火照ってしまった顔中の熱は、冷めることなく上昇していき、溢れ出る幸せに自然と口元が緩んでいる事に気付かなかった。 素直に慣れない恋人は嫌いですか -------------------------------------------------- なっちゃぁあああああん!誕生日おめでとぉおおお!! 遅くなってしまって、申し訳ない; 年上レン×年下ツンデリンのつもりです^^ 素直になれなくて自分の気持ちを上手く伝えれないけど、実際は感情が顔に出やすいのでレンにバレバレ(笑) つまり、ただのいちゃみねでしたー(´▽`) こんなもので良かったら、受け取って下さいな! |