報われない恋、してはいけない恋、普通とは違う恋。
それは形は違えど、さまざまなものがある。例えば教師と生徒が恋に落ちる事だったり、友達の恋人に恋をする事だったり。上げればたくさん出てくるし、少なくもない。それでもそれら全てが全てで無いにしろ、周りから嫌悪の目で見られる事も確か。なんて理不尽な世の中なのであろうか。
そんな恋の一つが、そう。血の繋がった者同士の恋。
それの何がいけないかだなんて、きっと何を聞くまでも無く理解している。それでも、理解しているだけではそれを止める事なんて出来なくて。
つまり、自分が理解していり以上にこの恋は厄介だ、という事。


昼間の暖かな光が窓から差し込み、むしむしとした部屋の中の温度を更に高める。勢い良く動き回っている扇風機を顔いっぱいに浴びて、込み上げる欠伸を素直に洩らした。
まだ蝉の鳴くには早い季節だが、もう暑くなってもおかしくない時期。毎年の如く異常気象だと喚く大人達の戯れ言に耳を傾ける余裕もなく、ただただ家に籠もって扇風機と睨めっこ。
今日は日曜日なので、学校は休み。レンはその休みを堪能する元気もなく、ただただ暑さに負けて。ぼーっとする脳内で、そっと溜め息を吐き出した。
外に出ると暑いし、これと言って何かをする気分にもなれない。ダルいなぁ、なんて言葉を頭の中で入り混ぜながら、人工的に作られた生温い風を浴びて目を閉じた。
その時だった、突然その風が止んだのは。

「もー!一人占めはズルいよ」
「……リン」

目を開けば、そこに居たのは姉であるリン。彼女は、帰宅部のレンとは違い、テニス部に所属している。その為、午前中は部活に行っており、どうやら今帰ってきたばかりらしい。
扇風機の風に髪の毛が揺れて、晒された額から滲んだ汗が現れる。その姿が何故だか妖艶で、扇風機を横取りされたという文句が直ぐに出てこなかった。
幼い頃から隠し続けてきたこの想いは、実に重くて濃い。ほら、彼女が目の前に居るだけで皮肉にも胸の奥が熱くなってくる。その純粋な瞳を汚したくなってくる。レンは頭を左右に振り、そんな考えを誤魔化すも自分の意志とは裏腹に、どんどんエスカレートしていく脳内に嫌気が差した。
蒸し暑い室内に何時間も居るので、思考回路が壊滅してしまったのかもしれない。いつも以上に我慢だとか理性が足りなくて、何だか自分が可笑しい。
暑い暑い!と同じ言葉を繰り返すリンは、風に揺れる声など気にも止めず、あーやらうーやらとだらしない声を上げている。しかし、それも束の間。扇風機を横取りしたのにも関わらず、何の反論の声も上げないレンを不振に感じたのか。
横取りした筈の風を、一気にレンの方へと向けた。

こんな暑い日に弱い風に満足する筈もないので、もちろん設定風速は強だ。そんな風を突然顔いっぱいに浴びさせられたら、驚いてしまうのも必然で。
不覚にも驚いてしまったレンを、悪戯が成功した子供のように笑うリン。それがなんだか悔しくて、気に食わなくて。彼女の口を引っ張ってやろうと、そっと片手を伸ばせば。彼女もその意図に気付いたのか、その腕を素早く掴み抵抗する。レンも負けじともう片方の腕を伸ばそうと身を乗り上げれば、二人はバランスを崩してしまい、え?という間抜けな声と共に床へとダイブした。
初めは上手く状況が摘めなくて、瞬きを数回繰り返す。目の前に広がる大好きな彼女はの瞳とぶつかって、自分が彼女を押し倒しているような形になっているのだと、ようやく気が付いた。
思わず飛び起きようとするが、ふと思い止まる。
もしも、いや本当にもしもの話なのだが、もしもこのまま彼女に自分の想いを吐き出したら、どうなるのだろうか。もう何年も我慢したし、何度もはぐらかされた。何度も、何度も。これでまたはぐらかされたら、このままこの想いを諦めれるかもしれない。でも、でも……?

「リン……俺っ、」
「レン!」

震える唇から紡がれた言葉は、リンのそれに遮られた。胸の奥が息苦しい、気持ち悪い吐き気がする。
レンはそっと彼女の上から退いて、ごめん。と呟いた。その声は潰れてしまっており、うまく相手に伝わったのかすら疑わしい。
すると突然、ふわりと甘い匂いがした。

「ううん、謝らないで。ごめん、ごめんね」

リンはレンの体をぎゅっと抱き締め、謝罪の言葉を繰り返す。どうして謝るのかなんて分からない、どうしてそうやって惑わそうとするのすら分からない。
そっと彼女の腰に腕を回そうとしたが、何故だかやってはいけないような気がして、そのまま腕を冷たい床に下ろした。




この声が届く日が来る事を願って




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匿名様、リクエストありがとございました!
何だか双子設定でなくても成り立つ+シリアスまっしぐらになってしまい、申し訳ないです;;
リンちゃんはレンの想いに気付いているけど、いけないと分かっているからわざとはぐらかしているつもりです!
きちんとリクエストに添えてなかったら、すみません;;
リクエスト、ありがとうございました!^^






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