(これが僕等の起こし方のレン視点) 自慢ではないが、朝は苦手だ。 重たい瞼を無理矢理開けて、しかも怠い体を動かさなくてはならない。それなのに、休みの日は無駄に早く起きてしまうのだから不思議だ。 しかし今日は平日。面倒な学校もあるし、あまりにも遅くなるとリンが起こしにくる。人に起こされるのは好きではないのだが、結局毎日起こされているので何も言えない自分は何だか溜め息ものだ。 それでも起こさないでくれと突き飛ばす事ができないのは、きっと惚れた弱みなんだと思う。 察しの通り、レンは姉であるリンの事を一人の女性として愛している。 彼女は百パーセント恋愛対象で見てくれないと思うが、それでも好きになってしまったのだから仕方がない。無防備にも抱きついてくる彼女を何度も脳内で犯したし、彼女に近付く男共に何度も制裁を与えた。 こんな事をして、今更ただのシスコンだと思い込む事もできず、ただただ毎日この想いを隠して一日の疲れと共に目を閉じていく。 それならばいっそのこと、嫌われるような事をして離れてしまえばいいんじゃないのか。そんな事も何度も何度も考えたのだが、行き着く答えはいつも同じ。 また、今度にしよう。 その言葉でいつもいつも行動を移さないでいる自分は、きっとこの先も変わらないと思う。これは予想だが、多分彼女と離れてしまえば自分はおかしくなってしまう、そんな気がするのだ。 レンは、もう少しで満月になるそんな月を眺めて、そっとカーテンを閉じた。そしてベッドに潜り込み、溜め息一つ。 明日になればまた怠い朝がやってくる。 レンはそっと枕の下にあるリンの写真を手に取り、じっと眺めれば。申し訳ない気持ちになりながらも、そっと布団の中に潜り込んだ。 ああ。何だか今日も、すごく疲れた。 「レン、朝だよ。起きて!」 「……う〜…ん」 「…………はぁ」 突然降ってきた声に、瞼の隙間から入り込む朝日に気が付いた。 もう朝になったのか、そんな言葉も上手く思うこともできず。レンは小さく唸りながらも、布団を先程より深く被り直した。 すると頭上から溜め息が落ちてきて、再び揺すられる体。あまりそんな近くに来て触れないでほしい、でも触れてほしい。 そんな思いと寝不足で苛々としてくる頭の中で、何かが切れる。そんな音がした。 「……え?」 リンの間の抜けた声が部屋に響き、ふわりと彼女の髪を撫でた。レンに突然腕を掴まれて驚いたのであろう、彼女は唖然と目を丸くさせている。 そんな彼女の腕をぐいっと引き寄せれば、煩いなぁ。と呟いて、そのまま彼女の唇を自分のものと重ねた。それは触れるだけのものだったが、予想以上に柔らかくて、心地良くて。 リンと目が合い、そっと瞳を細めた。 固まる彼女の頭の中では、きっと何が起こってるのか分からない状態だろう。まさか弟にこんな事をされると思っていなかったと突き飛ばして逃げるか、あるいは怖がって逃げるか。どちらも結局逃げるという予想が簡単にできてしまい、何だか可笑しくなってくる。 それでも後悔は不思議と湧いてこなかった。 どちらにせよ結局、元の関係になんて戻れないのだから、それならば。 レンはそっと唇を離し、未だに固まっているリンを思いっ切り引っ張り、ベッドの中に押し倒した。 予想以上に細い手首は強く握ると折れてしまいそうで、瞳は自分と同じなのに自分のものよりも澄んだ色をしているような気がする。組み敷いてみると、彼女への愛しさが儚くも爆発してしまいそう。 どうして、と揺らぐ瞳から逃げるように、彼女の唇に噛み付いた。リンは唇を固く閉ざしているので触れるだけのものしかできないが、顔を真っ赤に染めて小さく震えるその姿に背筋がゾクゾクと喜ぶ。 それでも、こんな事をしてはいけないと否定する自分も居て。 それを振り払うように、震える手で小さく自分の胸を押すリンに、口を開けて。と、彼女の唇を一舐め。 (ああ、何やってんだ俺……姉弟だろ。でも、止まらない) 震える口を開けた途端、そこに舌を滑り込ませた。歯列をなぞって、舌を絡め取り唾液を流し込んで。 何度も角度を変えて、まるで彼女の唇を食べているような感覚。口と口の隙間から零れる熱い息と甘い声に、思わず生唾を飲み込んだ。 この感覚が止められなくて、じっくりと深いキスに酔いしれていれば、彼女の服に手をかけそうになる自分を抑える。瞳がとろんととろけたように潤い、頬を真っ赤に染めて震えるリンの姿が何だか妖艶で。 それでもきっとこの先をいけば確実に一回では止める事ができない自信がある。 どうする。 どうせ元の関係に戻れないのだから、キス以上をしても問題はない筈だ。 どうする。 それでもリンは大切な姉、本当はこんな事だってやってはいけない事だったんだ。 相対する二つの言葉がぶつかり合い、交差する。 「御馳走様」 荒い息遣いを繰り返し、体をぐったりとさせるリンの額に一つキスを落とした。 口元にどちらのものと言えない唾液を流し、火照る体と揺らぐ瞳でレンを見つめるリン。レンはそんな彼女に微笑みかけ、そっと布団を掛けた。 やっぱり大切なものを汚してしまうなんて、自分にはできなくて。 今までの関係にサヨナラを告げるのと同時に、自分の部屋を後にした。 これが僕等の愛し方 ぱたん、と静かに閉じた扉にそっと背を預けて、レンはそっと天井を見上げた。 「あ、トイレ行こっ」 -------------------------------------------------- これが僕等の起こし方のレン視点。 レンが変態へと豹変しました。 しかしやっぱり近視相姦大好きすぎる。 |