(バイオレンスライフのレン視点) ああ、どうしてこんな事をしているのだろうか。 初めは純粋に愛していただけなのに。 いつからこんな事になったのかと聞かれたら、それはきっと実の妹に恋をする事が許されない事だと分かってしまった時からだと思う。 中学校に入った頃、それを知ってしまって。三つ下のまだ小学生だった彼女は、元々仲の良い兄妹だったのもあるが、いつもレンについていったりすり寄ったりしていて。とても嬉しかった筈なのに、何故だかそんな彼女に苛立ちを覚えるようになった。 高校に入ってから彼女に手を出すようになり、毎日のように叩いたり蹴ったり。止めないといけないと頭の中で強く思いながらも、頭に血が上るとどうしても止める事が出来なくて。 その頃からだと思う。彼女が死にたいと口癖のように言うようになり、躊躇いもなく自分の手首を切るようになったのは。 自分はこんなにリンの事を愛しているのに、彼女のその拒否の行動に腹が立って。 いつものように自室で手首を切り、うっすら笑みを浮かべるリンを目撃したその夜、彼女をこの手で犯した。 初めは驚いて強く抵抗していた彼女も、頬を平手打ちすれば抵抗しなくなり、そのまま気が済むまで犯し続けた。行為が終わった後、気を失ってしまった彼女の姿に、ちくりと痛む胸の奥。 それでも、もう後戻りなんて出来なくて。 レンは深い溜め息を吐き出し、虚ろにも空を眺めた。 今日は部活があり、そのために学校に来たのだが、何だかいつも以上にやる気が出ない。そのせいか目の前に来たボールに反応する事ができなくて、そのまま顔面でそれを受け止めてしまった。 レンはサッカー部内でもエースとして期待されているので、いつもと違う彼を心配して、顧問の先生に今日は休むようにと帰らされたのだ。 見慣れた通学路を逆に進み、家へと目指す。 いつからであろうか。好きな物、全てが分からなくなってきたのは。 サッカーは昔から好きで、期待される度に喜んでいたのだが、その期待がいつからか重く感じてきて。それでもその期待に応える為に今まで頑張ってきたのだが、今では何のために頑張っているのか分からなくなった。 好きなのに、嫌になって。 好きなのに、傷付けて。 好きなのに、好きなのに。 それでも、リンを愛している。その言葉は確信をもって言えた。 ガチャリ、と家の扉を開ける。 そこで一つの違和感、確か家にはリンが居る筈なのに灯りが付いていない。ゆっくりと家の中へと入れば、段々と嫌な予感がしてきて。 レンは彼女を探すようにリビングや部屋へと足を運び、それでも見つからず、不安だけが込み上げていく。そして風呂場の前を通って、立ち止まった。灯りは付いていないが、何故だかここに居ると確信している自分が居て。 ゆっくりと灯りを付けて風呂場の扉を開けば、最初に目に入ったのは目を見開けてどこか怯えるように瞳を揺らす妹の姿。手首は湯船に浸っており、お湯に溶け込んでいる赤いものは彼女の血なのだと直ぐに分かった。 それを見た瞬間、先程までの不安がだんだんと冷めていって。それと同時に頭に血が上っていく。 駄目だ駄目だと、落ち着かないとまた同じ事の繰り返しじゃないかと、そんな言葉を頭の中で自分自身に訴えかけるが、それでも自分で自分を止める事が出来なかった。 ふと、目に入ったのはリンの手首を切った剃刀。どうしてそんなものを大事に持っているのか分からない、自分よりそんなものが大事だとでも言うのだろうか。 そう思ってしまえば先程以上に腹が立って、何をしてるのかと聞いても何の反応も無い彼女にもっと腹が立って。その苛々を扉にぶつければ、思いっ切り蹴っ飛ばした扉の音は予想以上に響いた。 何度も彼女を蹴って、その綺麗な顔を湯船に無理矢理押し込んで。苦しそうに咳き込み、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった彼女はとても綺麗だった。 こんなにも好きで好きで好きで、どうしようもないのに。この感情をどうすれば良いのか分からない、この苛々とする感情が湧き出てくる意味も分からない。 好き、って何? 「……もう、殺して」 リンの言葉で我に返れば、その言葉の意味を数秒間考える。彼女の髪を離し、唖然と見つめた。 違う、殺したいんじゃない。 違う違う、傷付けたいんじゃない。 違う違う違う、ただ愛してるだけだ。 こんなにもこんなにも好きなのに、彼女には一ミリも伝わっていないという事実に何だか笑えてくる。分かっていた筈なのに、何だか可笑しくて。 レンは思いっきり吹き出せば、こんな自分を嘲笑うように声を上げて笑った。そして彼女の小さな体を抱き締めれば、ぐったりと動かないその体を愛しそうに抱き締める腕に力を入れる。 虚ろな瞳を揺らし、ピクリともしない彼女が愛しくて、愛しくて。 "好き"という意味が分からなくなるくらい、彼女の事が好き。これはサッカーが好きとは違う意味合いのもので、一言で言えば愛狂おしい。 きっとこれから先も、彼女への暴力や性的暴力は変わらないだろう。それは嫉妬か愛情表現か、そんなもの分からないがこれだけは言える。 彼女がこの愛に気付くまでは、ずっとずっと続くのだと。 「この先ずっと逃がしてやんねぇよ」 だから死なせてあげない。 もう傷つけたくないし、こんな事をしたくない。それでもそれを止めてしまえば、きっと彼女と自分を繋ぐものは消えてしまうような気がして。 だから、早く気付いてね。 レンは気を失った彼女にそっと、愛してる。と呟いた。 バイオレンスラブ -------------------------------------------------- バイオレンスライフのレン視点。 好きの意味が分からなくなったけど、リンを愛してるという事は明確だという話。 自分で書いていて、よく分からなくなりました← |