本日快晴。 昨日までの大雨が嘘のように、雲一つない青。昨日まで寒々しかった空気は、大地に降り注ぐ太陽の恵みによって暖かな気温へと変動している。きっと寒いより暖かい方が好きな人は多いと思うので、それはとても良い事なのだが。 その、さんさんと降り注ぐ日光が授業中の教室に入ってきており、最上級の睡魔が教室全体に襲ってきていた。 きっと生徒の半数以上は夢の中であろう。 レンは頭を痛めながらも、長い数式を書きながら、時々欠伸を漏らした。 数学の先生であるレンは、高校教師という職に就いたばかりの研修中の新米教師だ。まだまだ至らないことばかりで、失敗も多々ある。それでも生徒からは人気がある事だけは、とても自信があった。 授業中に寝るのは感心しないが、それでもあまり強くは注意していない。しかし流石に半数以上が眠っていると授業にならないので、レンは溜め息を零してそっとチョークを置き、教卓に両手をついた。 辺りを見回せば、起こす気が無くなってしまうほど心地よさそうに眠っている生徒達。そんな姿を見て、注意しようと開けた口が開いたままになる。小さく頭を掻けば、起きている少数の生徒達にくすくすと笑われた。 レンは苦笑いで見渡していれば、眠っている生徒達の中に自分の恋人を見つけた。 窓側の後ろから二番目の席であるリンは、睡魔に負けてしまったのであろう、寝息を立てず静かに眠っている。その姿はとても綺麗で、余計に注意なんてしたくなくなる。 レンはリンが通っている高校の先生であり、恋人である。二人は周りに内緒で付き合っており、彼女が高校を卒業するまで公言するつもりはない。 きっかけは、良くある一目惚れ。リンが初めに一目惚れをして、そんな彼女と話す度に段々と惹かれていく自分に気付いたのだ。そして告白はレンからで、彼女も喜んで受け入れてくれた。 しかし先生と生徒という関係のせいで、学校に居るというのに彼女に触れる事が出来ないという難痒い思いをしている。もちろん休みの日には必ず会っているのだが、本当は周りにリンは自分のモノだと公言したい。 彼女を学校でも、いつでもどこでも独占したかった。 そんな叶わない想いに溜め息を零し、暖かな日差しに再び欠伸が漏れた。 結局眠っている生徒達を起こす事もせず、授業を再開して。そんな中、太陽が暖かな空気を作っていき、窓から零れる暖かい光がだんだんと大きくなってゆく。これじゃあ授業が終わっても起きないんじゃないかと不安に感じながらも再び振り返ってみれば、太陽の光が無防備に眠るリンに降り注いで綺麗に光っているように見えた。 その姿が本当に綺麗で、綺麗で。 今が学校だとか授業中だとか、そんな事なんて頭から消え去り。どうしたのかとざわめき始める生徒達なんて蚊帳の外で、じっとリンに魅入っていた。 「……もう、限界だ。」 レンは小さな声で呟けば、教科書を教卓の上に置いて。そっと足を踏み出し、眠っている生徒達の机と机の間を通っていく。 そしてリンの席の前に辿り着けば、そっとしゃがみ込んで彼女の顔を眺めた。すやすやと寝息を立たせず眠る彼女に、思わず頬が綻ぶ。 教室内は、寝ている生徒が半数以上だが、寝ていない生徒も勿論いる。眠っていない生徒達は、どうしたのかと疑問符を頭の上に作り、レンの姿を見つめている。 そんな人の目線など気にも止めず、レンはふわりとリンの髪を触る。その柔らかな髪を数回撫でて、そっとそれに口付けた。 そして徐に立ち上がれば、起きている少数の生徒達に向けて。そっと人差し指を口元に持っていき"秘密だからな"と微笑んだ。 唖然とする生徒達に気を止めず、再びリンの方へと向き合い、しゃがみ込む。 そしてその無防備な唇に、一つキスを落とした。 それは触れるだけのもので、暖かな教室内に小さなリップ音が響く。小さく身じろぐリンに満足し、頬を一撫でした後、レンは何事も無かったように教卓に戻り、授業を再開しはじめた。 いつでもどこでも 寝ていた生徒達は未だに起きる気配がない。 起きていた生徒達は余りの衝撃に授業どころでは無かった。 そして今日1日、鏡音先生はいつも以上に機嫌が良かったらしい。 -------------------------------------------------- 先生レン×生徒リン たぶん次の日、交際がバレて飛ばされるんですね、分かります← |