付き合い始めて一年と半年。
親友曰わく、校内でも有名なバカップルらしい。名字も同じだし容姿も似ているので、姉弟か双子と間違われ易いのだが、一応血は繋がっていない。
彼とは学年は同じだがクラスが違う。それでも部活が同じなので、彼を好きになるきっかけは十分にあった。バスケ部のエースであるレンとマネジャーのリン、部活が終わった後に一人で残って自主練をする彼に呼び止められて告白され。答えはもちろんイエス。
クールであまり喋らないが、そんな所が沢山の女生徒のハートを鷲掴みしている。なので、告白された時は本当に夢なのかと思った。
レンの事が大好きだし、離れるなんてしたくない。それは、彼の事を嫌いになる事なんて無いんじゃないかと思える程。
それでも彼の性格故か、好きとか愛してるという言葉を殆ど言ってくれない。それに何だか素っ気なくて、時々寂しくなる時がある。
寂しいと思っていれば、彼に頭を撫でられたり、抱き付いてきたりして。そんな事をされたら、嫌いになんてなれない自分が居て。
それでもやっぱり物足りなくて。

リンは小さく溜め息を吐き、そっと目の前にある彼の背中を眺めた。
今はレンの家にお邪魔している。彼の家には何度か足を運んだ事があるので、既に見慣れてしまった彼の部屋を今一度見渡した。
ユニフォームやバスケットボールや、彼の好きそうな少年漫画も大量にある。そしてロック系の曲を鳴らすコンポは休む事を知らない。
そして再び彼の背中を眺めて、溜め息一つ。
これは無いんじゃないないだろうか。
昨日、家に来るように誘った彼は今、目の前でゲームに集中している。彼のベッドの上で体操座りをして、彼の背中と部屋の扉を何度も目で見比べる。
ここに居てもただひたすら時間だけが過ぎていくだけだし、何だか自分が邪魔者のような気がして、無償に自分の家に帰りたい。もちろん彼と一緒に居るのは幸せなのだが、何だか構ってくれないと寂しくて寂しくて。

「レンはあたしの事、本当に好きなのかな?」

ぽつりと漏らした言葉はゲームの音や曲の流れる部屋の中で、予想以上に響いた。それでもそんな事を気にする余裕も無くて。俯いてベッドの布団に数秒間目を向けて、そっとレンの背中を眺める。
先程の言葉が聞こえていたらどうしよう、だとかの不安ではなくて、ただただ"好き"という言葉を期待して。テレビから放たれるゲームの音だけが響き、呼吸さえ息苦しい。するとゲームの画面がポーズ画面になって。
はぁ、と溜め息混じりにコントローラーを床に置く音が静かな室内に響く。そしてレンがそっと、こちらに振り向いた。
目と目が合い、思わずどきっと心臓が波打つ。彼がこちらに近付いて来る度に、どきどきと心臓の音が煩いほど高鳴る。こんなに緊張したのは久しぶりだ。彼の瞳はとても真剣で、そしてとても優しい。

そっとレンがリンの座るベッドに乗り上がり、ぎしっと軋んだ。その動作をじっと目で追いながらも、どきどきと鳴り止まない心臓に瞬きを数回繰り返す。
小さな期待を胸に膨らませていると、レンは重心をかけて、倒れ込むようにリンの腕と頭を掴み、優しいキスを落とした。
予想もしてなかったので、頭の中で混乱する。その勢いで後ろに倒れ込むと、自然とレンに押し倒される形になり。彼はそっとリンの頭を撫でて、額を小突いた。
これが答え。
レンはいつも言葉ではなく、行動で示している。リンはそんな彼に少し不満を覚えるが、頭の中には何故か文句の言葉は一言も存在しなかった。
そして"リンと一分一秒でも離れたくないんだ"と真顔で言う彼に、だんだんと頬が火照っていくのが自分でも分かる。そんな恥ずかしい台詞が言えるのなら、好きと言ってほしかったが、何故だかその言葉以上に嬉しくて。
未だに密着して頭を撫でられており、あまりの幸せに眩暈がした。




愛してる以上の言葉




君にはいつも負ける。
君が居れば、愛の言葉なんていらないって思ってしまうから。
だって君はその言葉以上にあたしを愛してくれているのだから…




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クーレン×リン
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