朝、チチチ……というありきたりな雀の鳴き声を聞きながら、ベッドから起き上がる。漆黒の髪を揺らせ、未だ眠っている頭に朝だと認識させ。重たい瞼をこすり、ゆっくりと身支度をはじめた。
彼の名前は、うちはサスケ。
鷹高校二年生だ。生徒会長を勤めているが部活には所属しておらず、忙しい両親の代わりにいつも家事をしている(と、いってもサスケは朝が弱いので、それだけは兄にまかせているのだが)。
サスケは小さく欠伸をすれば、カーテンの隙間から零れる太陽の光を見て、部屋の扉を勢いよく開けた。

いつものように、朝ご飯の支度がされている食卓へと足を踏み入れる。
すると案の定、そこには兄しかいなくて。
しかし、両親が朝昼晩と居ないのはいつもの事であった。仕事柄、仕方のないことであり、残った兄弟はそれを了承している。
食卓に置かれている食事は、トーストに卵焼き、トマトを主としたサラダ。そしてサスケのいつも座っている席には、ちょこんとおにぎりの入った弁当袋が置かれていた。
いつも兄が、朝早く起きて作ってくれているのだ。
兄、イタチは大学生であり、将来は弁護士になるといって、日々勉強を続けている。サスケはそんなイタチの事を心から尊敬していた。そして、心から大好きだった。
そんな彼が毎朝作ってくれる朝食と弁当のおにぎりの美味しさは、彼が作ってくれたという事実のスパイスにより格別の味。
そんな風に思える程、サスケは兄を愛しているのだ。

「サスケ、今日は帰りが遅くなるんだったな。」
「あぁ、…生徒会の仕事が溜まってきてるからな。」

はぁ、とあからさまな溜め息を漏らし、サラダを一口、口へと運ぶ。
サスケの家庭事情は生徒会の皆も承知なので、皆が気を使い彼の帰りが遅くなることは滅多にないのだが、日頃貯めていた仕事を済ませる為に帰りが遅くなることは偶にあるのだ。
また沢山溜まっているんだろう、と。いつもそれを考えるだけで億劫だった。
そんな嫌そうな顔をするサスケに、イタチはポンっと頭に手を添えると、くしゃくしゃと髪を掻き乱した。

「何すんだよ?」
「そう気に病むな。今日は俺が、サスケの為に夕食を作っておくから、な。」
「……ありがとな。」

イタチの優しい笑顔にサスケはニッと口元を緩ませた。
兄のこの柔らかな笑顔、これが一番大好きだ。
とても安心できて、兄に微笑みかけられれば億劫な仕事もすぐ終わらせれる。そんな気がしてくるから。
そんな事をサスケが考えているだなんて検討もしないイタチは、徐に時計を見て。

「あ。サスケ、もう出る時間じゃないのか?」
「うわっ、やべ。」
「サスケ。」
「?」

急ごうと席を立った途端に呼び止められ、イタチの方へと振り返る。
すると、ふわりと唇に柔らかな感触。キスをされた。
それは触れるだけのもので。離れた後、数秒たってから一気に顔へと熱が集中してくる。そんなサスケにイタチは再び笑顔をみせて、

「いってらっしゃい。」

そういって、再び頭に手を添え柔らかく撫でた。
サスケは上昇する熱を隠しきれないまま、彼の胸へと飛び込み、ぎゅっと抱き締める。

「いってきます。」

そして、お互い再び軽くキスをして密着していた体を離し。
火照った頬を冷ますように、急いで玄関へと駆けて行った。



日常にある幸せの欠片





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日常にある幸せの欠片を、一つ見つけた。



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