真っ暗な闇の中に、ぽつんと立っていた。
先なんて見えない。ただ己の信じる道を進む事しかできない。
それが正しいのか間違いなのか、それを確かめる術すらない。
後ろから突然斬られるかもしれないし、進む先は崖かもしれないのに。何も見えないんだ。
どこへ行けば本物で、どこへ行けば偽物か。何も分からないが、自分は進む事しかできないのだ。
己から断ち切った光なのに前へ前へ進んでいく度に、ぐるぐると纏わりついてくるのは不安という暗雲ばかり。
俺は、いつからこんな世界を見ていたのだろうか。ふとそう思えば、自分の事なのに、まるで傍観者の立場にいるようで可笑しかった。

ずきっ。
突然、痛みを感じた。
ずき、ずき。ぽた、ぽた。
痛みをするのは、ちょうど腹の辺り。そこから流れる生暖かい液体。
ズブズブと深くなってくる痛みと異物感に、己の腹を確認すれば。それは紛れもなく、草薙の剣で。
剣の先から伝う真っ赤な液体は、一滴一滴虚しく地面に落ちていく。
ゆっくりと首を後ろへ回せば。
ツンツンと尖った黒い髪に、据わった瞳。そこにいるのは己自身だった。

サスケは瞳を見開き、言葉を発そうとすれば、ごぽごぽと溢れる真っ赤な血液にきちんと言葉を口にする事ができなかった。
痛みはきちんとある。夢、なのか?分からない。
足がもつれてきて、そのまま倒れると思った瞬間、地面が崩れ始める。
逃げなくちゃ、なんて考えが浮かぶ前に感じる浮遊感。
あぁ、俺はここで死んでしまうのか。そんな事は一人前に考える事ができたのに。

落ちていく中、小さな歌声が聴こえた。小さい子供が歌うようなボーイソプラノ。
聞いた事のある声だが、思い出せれない。
こんな暗闇の中で誰がどうして歌っているのだろう。
どうして、この歌なんだろう。
この歌は昔、唯一の兄と一緒に歌って歩いた、思い出の歌。今となっては忘れたい思い出の一つとなっている、そんな歌。
……、あぁ。そうか。この声は、昔の自分だ。

重力に従い落ちていく体と、真っ赤な血液。そして、歌。
真っ暗な闇の中で零れていく命と思い出に、恐怖が生まれてきた。
手を伸ばしても届かない、元の場所。
復讐という闇を纏い、全てを断ち切った己の末路がコレか。
もう後戻りなんて出来ない。今更道を変えるなんて事も出来ない。
それでも、少しの希望に縋っても良いだろうか。

「……兄さん。」

伸ばした手の先に暖かな光が差し込めた、そんな気がした。



暗闇の中の一寸の光





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復讐の道を行き、世界を闇の中から見てきたサスケと、そんなサスケをずっと想い助けようとするイタチ。

……の、イメージ。




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