真っ赤な夕日が完全に沈んだ頃、明日も朝から部活の朝練があるというのに、サスケは黙々と部屋の整理整頓に励んでいた。
元々必要最低限の物しか置かない主義なので、散らかってなどはいないが念の為。机に置いたままにしていた読み途中の本も、脱いだばかりの制服も全て元の場所へ戻す。
どうして今、このような事をしているのかというと。
そう、あいつのせいなのだ。

『今日お前の家に行ってもいいか?』

部活が終わり、制服に着替えている最中に携帯電話越しにイタチに言われた一言。
あの時は疲れで頭がきちんと回らず(曖昧な言葉ではあったが)きちんと自分の言葉で、それを了承してしまったのだ。

サスケは家から学校が離れているので、一人暮らしをしている。なので唯一の兄弟であるイタチとはあまり会えないのだが、彼と一緒にいると心臓の音がどうしても煩くなって。
いつ己の本音を漏らしてしまわないかと不安でしかたなかった。なので彼とは離れて良かったのかもしれないと思っていた。
そんな時に、イタチに電話越しで告白されたのは一昨日の夜だった。
元々自分は彼の事が好きだし、そんな彼に好きと言われて断る理由なんてなかったので、小さくその告白に同意したのだった。

そんな恋人というかたちになって初めて再開できるだなんて嬉しかったのだが、恥ずかしさとプライドの方が上をいき、素直に喜べない自分が居る。
どう接すればいいのか、分からないのだ。
(あぁ、くそ。…どうすんだよ)

サスケが頭の中で奮闘しながら整理整頓をしていると、ピンポーンとありきたりなチャイムが部屋の中に響き渡った。
(あいつが、来た…!)
どうしようという不安と、やっと来たという期待感がごちゃごちゃに入り組みあっていく。まるで部屋の中がぐるぐると渦巻いているみたいだ。
そんな錯覚を覚えながら、玄関に足を進めていく。
そして恐る恐るドアを開ければ。

「……、サスケ…。」
「……。は、入れよ。」

向こうも同じ心配をしているのか、いないのか。自分と同じように動揺しているイタチを確認すれば、オレに会いたかったのかなと期待感が生まれ。嬉しさを隠すように背を向けて中へと誘導する。
背中から聞こえてきたドアを閉める音がとても小さく、やはり緊張しているんだと再確認した。

殺風景な部屋の中へ案内して、座布団さえもない床へと座らせる。
イタチは緊張しているからであろうか部屋に入って以来、一言も発していない。そしてそれはサスケも同じで。そのせいか、辺りはシンと静まり返っている(何も喋ってないのだから当たり前だが)。

チッチッチッと一定の速さで動く時計の針の音が無償に煩く感じる。それ以外に音といったものは無く、正直言って気まずい。
二人ともお互いの顔を見るのが恥ずかしいのであろう、目線を下に向けて正座で向き合っている。
どうして正座をしているのかと聞かれれば、どう答えて良いのか分からないが。あえて言うなら、成り行きだ。

サスケはチラリとイタチへと目線をずらせば、パチリと目が合う。そして殆ど同時に目線を再び下へと変えた。
本当はもっと話もしたいし、もっと触れていたい。自分がもっと素直であれば、こんな気まずい思いをしなくても良かったのにな。そんな思いに溜め息がでてくる。
そんな時であった、

ぐ〜……

ほぼ同時にお腹が鳴ったのは。チラリと窓の外を眺めてみれば、外は既に真っ暗で。そういえばお昼から何も食べていなかった事に気付く。

二人はお互いに顔を合わせ。
イタチが思わず吹き出したのを合図に、お互いに大声を出して笑い合った。
(今まで緊張していた俺らが馬鹿みてぇだな。)
不器用な俺達だからこそ、くだらないきっかけが必要なのかもしれない。

そしてその後、一緒に晩御飯を作って一緒に食べたのはまた別の話。



青春は終わらない




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兄弟だけど二人きりになると、どきどきと緊張が止まらないと良いな←




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