がたんっ。
物が落ちる音がした。たぶん、さっきまで読んでいた本が床に落ちたのであろう。
あーあ、まだ読みかけだったのにな、とか。そういえば今何時だろう、とか。
唇の柔らかな感触に興奮しながらも、なぜか頭の中では冷静に物事を考えれる(ああ、これが現実逃避っていうのかな)。

ぎしっ。
今度はベッドが軋む音がした。今まで座っていたのに、視界が90度変わって。今は目線の先に天井と大好きな彼が見える。
何、この状況?とか、そんな疑問は一つも浮かばなかったけれど。ふと、思ったんだ。

「あれ?オイラが下、なのか?」

あ、旦那が唖然としてる。
確かにこの状況でこんな事を聞く自分はただの空気を読めていない人間だろう。でも思ってしまったのだから仕方がない。
オイラだってれっきとした正真正銘の男だ。挿れられるよりかは、挿れたい。
(まぁ、どちらにせよ。勇気がないから出来ないけど。)

パチリと瞬きをしながらも、じっとサソリの表情を凝視する。たぶんオイラの表情は彼と同じで唖然としているんだろうな、なんて思いながら。
何秒、いや何分たったのであろうか。
正確な時間までは分からないが、一刻一刻と時計の針は確実に進んでいる。ずっと同じ体制で、同じ距離で。それでも表情は真剣になっていき。

ちゅっ。
ありきたりな音と共に唇に柔らかな感触。それを合図に、さっきまでの硬直状態が解けてサソリの体が密着し。
耳元に寄せられた口から生暖かな吐息と共に発せられたのは、艶やかな声。

「俺が上で良いだろ?」

その言葉と共にぺろりと耳を舐めとられ、背中の奥がぞくぞくとする。そんな感覚に体中が真っ赤に火照っていき、デイダラは頷くことしかできなかった。
それでも嫌だという感情なんて微塵も感じなくて。(旦那だから、受け入れられるんだろうなぁ。うん。)
デイダラはゆっくりと彼の首に自分の腕をまわした。



それは必然的に





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