朝日がカーテンの隙間から差し込め、未だに眠っている己に朝を告げるように優しく照らす。カチッと鳴ってもいない目覚ましを止めれば、大きく伸びをして布団からゆっくりと出ていく。
今はまだ5時30分。学校が始まる時間から自分の家の距離を計算しても、十分すぎるほどの余裕な時間。
それでもこれは、いつもと同じ時間。

デイダラはテキパキと慣れた手つきで朝ご飯であるトーストをオーブントースターに入れて、その間に着替えを済ませる。そしてタイミングよくトーストが焼き上がれば、それにバターを塗って口に放り込んだ。
時々喉に詰まりかけてしまうので、コップに適度に注いだ牛乳を流し込む。これは内緒だが、背が伸びるようにと朝はいつも牛乳を飲んでいるのだ。
そして歯磨きも忘れずに済ませ、髪の毛を綺麗に括る。
これで約40分(主に髪の毛に時間がかかる)。
学校に着くにはまだまだ余裕のある時間帯だが、デイダラは足早に家を出て行った。

自転車で、すーっと坂を下る。緩やかな坂だが、この坂を下るのは大好きだ。
この坂を下っている間に見える街の情景だとか、木陰からチラチラと漏れる太陽の光だとか。それぞれがミックスされた、この場所を一人で堪能できるみたいで小さな優越感が湧いてくる。
そして、この坂を下れば学校に着く訳だが。
すーっ、と校門を潜り、まだ誰も来ていない為、蛻の殻である自転車置き場に自転車を置けば。鞄と自転車の鍵を忘れずに持ち、ある目的の場所へと駆け出した。

ぱこんっ、ぱこんっ。
一定のリズムで鳴るその場所へと辿り着き、デイダラは少し呼吸を整えてから再度それへと目を向けた。
目の前ではテニスのラケットを振り、壁打ちを繰り返す赤髪の男がいる。それはテニス部の部長であるサソリで。
デイダラはテニス部という訳ではないが、この間勉強をしようと朝早く来た時に偶然見かけたのだ。彼はただ壁打ちを繰り返しているだけなのだが、なぜかそれに魅入ってしまい。
その日から毎日この時間に来て、彼の壁打ちをする姿を遠くから見つめているのだ。
いつのまにか朝早く来て、彼を見るのが毎日の習慣になってしまった。
どうしてかなんて上手く説明できないが、なんとなく見ていたいと思ったのだ。

彼はそんな自分の事を気付いているのだろうか。気付いていないと良いな。
いや、やっぱり気付いて欲しい。
そんな事を思いながら見つめていると、ふと一瞬彼がこちらを見た、そんな気がした。

(目があっただなんて、気のせい。気のせい。)
(彼が少し笑った気がしたなんて、気のせい。気のせい。)



気のせい、じゃない




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実は両想いな話。
たぶん次の日にサソリに話しかけられます。




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