じわじわと照りつける太陽。動いてもいないのに、じわりと染み出てくる汗を拭ったのはこれで何度目であろうか。まるで蒸し風呂に浸かっている気分だ。
それでもそんな暑さなど今まで修行してきた分、耐える事は慣れていたし、目の前に広がるトマト畑を見れば自然と暑さなんて紛らわす事ができた。

サスケは復讐に己を染めて、唯一無二の兄であるイタチを殺すために生きてきた。
しかし、やはり兄弟。最後の最後で彼の息の根を止める事ができなかった。俺はイタチが好き、その言葉に気付いてしまったから。
それから二人で話し合った末、木の葉の里の外れにある山で農業をして、のんびり過ごすことにした。
争いなんてない、兄弟で離れ離れになることもない、そんな生活。

かさっ、と葉と葉を掻き分けて真っ赤に熟したトマトを見る。
無農薬で育てたそれは、まるで生きているかのように凛と、真っ赤な実を際立たせている。それを一つだけ手に取れば、プチッと摘んで籠へと入れてやる。
その一連の動作を繰り返し、再び真っ赤なトマトに手を添えた時、それがとても美味しそうに熟しているものだから、思わず口に持っていこうとした。
その時だった。

「こら、サスケ。それは売り物だぞ。」

そう、これは売り物。
サスケとイタチは忍を辞めて里を離れたのだが、流石に育てた野菜だけで生きていくだなんて無理な話なので、定期的に里に降りて実りたての野菜や果実を売って生活費の足しにしているのだ。
生活費の足しといっても大した額にはならないのだが、兄弟二人で生きていけるだけで贅沢だったので、それ以上の贅沢なんていらなかった。

サスケは片手に持った好物の赤いトマトを一度眺め、別に良いだろ?とイタチへと目線を戻す。
お願い、だなんて子供っぽい事だとは思っていたが、この炎天下の中で水々しく透き通るような赤を見れば我慢なんてできなくて。少し困ったような表情で見るイタチの隙を付いて、素早く口へと含んだ。
否、含んだと思っていた。
思っていたのだが、実際にはトマトを持っていた右手を彼の右手により固定されていた。
それでも諦められなくて。無理矢理にでも食べてやろうと暴れていたら、躓いてしまった。
そのまま、どさっ。と葉と葉が絡み合う土の上へと倒れてしまう。
幸か不幸か。痛みはなかったのだが、先程まで取り合いになっていたトマトは自分の手から転げ落ち、寂しそうに土の上に転がっている。

食べる事ができなかった事に対して不満を覚え、キッと睨む為に顔を上げれば喉まで出かけていた文句が腹の中へと戻っていった。
なぜなら、思いのほかイタチとの距離が近すぎたから。
サスケが倒れた時に、その拍子にイタチも倒れ込んでしまったのであろう。まるでイタチがサスケを押し倒したような恰好をしている。
その恰好の為、鼻と鼻が触れてしまいそうだ。それがとても恥ずかしくて。
思わず目を逸らせば、降ってくるのは柔らかなキス。額に頬に首筋に。ちゅっ、ちゅっ、と音を立ててキスをするイタチに流されていたら、ちくりと痛みが走った。
どうやらイタチが首筋を噛んだらしい。
暑さのせいか恥ずかしさのせいか、真っ赤になった顔をイタチの方へと戻せば。

「トマトよりお前の方が真っ赤で美味しそうだ」

と言って、今度は唇にキスをされた。
それが何だか、むずかゆくて。くすりと笑えば、ダムが決壊したかのように二人で笑いあった。
この一つ一つの瞬間が嬉しくて、嬉しくて。血生臭い忍の世界から身を引いて良かったな、と改めて感じる。
サスケとイタチはその場に立ち上がれば、トマトの入った籠を持ち再び収穫に取り掛かる。今度は二人、微笑みを浮かべながら。



毎日の幸せの一時




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フリリクの野菜農園を営む兄弟でしたが、ただトマトを収穫している兄弟になりました;
元忍者なので畑を耕すなんて数分もいらないだろうし、忍術を使えばもっと色んな事ができると思ったのですが、自分の文章能力からはこれが限界でした^^←

フリリク感謝!



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