来週から大学生。三つ上の兄に少しでも近づきたかった為、必死で勉強をし、合格することができたのだ。 兄であるイタチは来年には卒業なのだが、それでも兄の通っている大学には興味があったし、同じ大学に通えると思うだけでどきどきしてしまう。 そんな大学の校門の前で、サスケは誇らしげにそれを見上げた。敷地も建物も大きく、入試試験で来たことがあったとしても、この建物の中へ入れば迷ってしまう自信は十分にある。 だが今は入学前。入ったら確実に迷ってしまうここで、迷う必要もないし、迷いたいとも思わない。 それでもサスケはこの大学の中へ入らなければならない口実があった。 サスケはその口実である右手に持っている弁当を忌々しげに眺めた。 両親を亡くしてから家計が安定する事はなく、火の車状態なので、毎日毎日イタチに学食を食べてもらう訳にはいかないのだ。 なのでサスケは、ここのところ毎日イタチの為に弁当を作ってあげている。 サスケ曰わく、……仕方がないから、しょうがない。らしい。 しかし今日は、勉強の為かいつもより早く家を出ていってしまった。当然作っていなかったサスケは急いで弁当を作り、それを届ける為に今この場に立っているのだ。 私服だから目立たないよな、と己の脳内で言い聞かせ。一歩一歩、進んでいく。 ここの大学は自然を基調として建てられているのか、たくさんの木が影を作り暑さを紛らわしてくれる。 このような落ち着いた空間は嫌いではない。木陰にあるベンチに座り、読書をする。そんな未来の自分が容易に想像できて、サスケは小さく笑みを浮かべた。 そんな時だった。 前方かゆっくりとした足取りでこちらへと向かってくる女性に気が付いたのは。 話しかけることは得意ではないのが、イタチの居場所を聞くには好都合だったので、すみません。と一言断りを得る為に話しかけた。 すると話しかけた女性はきょろきょろと辺りを見渡し、自分に話しかけられていると分かれば嬉しそうに微笑んだ。 なので、そのままイタチの居場所を聞けば、生憎その女性はイタチの事を知ってはおらず。やはりそう簡単に見つかる筈がないか、と肩を落とした。 そんなサスケの様子に女性は首を傾げ、どうしたのか尋ねる。 サスケは、弁当を届けに来たんだと苦笑混じりに言おうと右手の物を少し上げて、口開きかけた。 「……サスケ?」 「!」 驚いた。話していた女性の後ろから突然、探していた張本人が歩いて来たから。 しかし、それだけではない。イタチも驚いているが、明らかに怒気も纏っている。心当たりなんてある筈もなく、サスケは眉を顰めて彼を見つめた。 先程まで話していた女性はそれに察したのか否か、見つかって良かったね。と相槌を打ち、この場から去っていった。 それを目線で追えば、再び兄へと目線を戻す。 そしてこの大学に来た理由である弁当を渡そうとした時、イタチの口が開いた。 「サスケ、あの子と何を話してたんだ?」 「……は?」 「だから、何を話してたんだ?」 一瞬、何の事か分からなかった。しかし、彼の口調は真剣そのもので。 先程感じた怒気は、これか。と、自分の中で自己解決した。 元々あまり己の感情を現にしないイタチが、自分の為に嫉妬という感情を現にしており、それが何だか嬉しくて。兄の頭の中を独占しているみたいで自然と口が綻ぶ。 俺は、いつも彼の事を考える。弁当を作る時だって、今日だって。 だから、右手に持っていた弁当をイタチの目の前に差し出して、言ってやったんだ。 「あんたの事だよ。」 と、愛を込めて。 考える事はいつも、 ------------------------ 弁当を大学まで持ってくる健気なサスケが書きたかったのです^^ |