ざぁ……。強い風が吹き付ける中、その風の流れとは逆方向へと走っていく。本日のアカデミーが終わり、いつものように修行をしようといつもの場所へ向かっているのだ。
誰かを待たせている訳でもないのだが修行をしようと足取りが軽くなるのは、強くなりたいという理由だけではなくて。もっと些細な理由があるのだ。アカデミーではいつも一人でいるのだが、先程までの暗い顔などどこかへ吹き飛んだかのように、うきうきと胸を踊らせる。
そして漸く着いた修行場所の近くの木陰へ、敵を見つけた訳ではないのだが隠れるように身を潜めた。

木々の隙間から立ち込める太陽の光。風で揺られる度に、その光も不規則に動きだす。ざわざわとざわめく木々達の中にある、一つの人影。それは目を閉じて何かを待っているかのように静かに立っている。その人物は手にクナイを握り締め、汗一つかかず冷静に存在を主張している。
耳を済ませば聞こえてくる空気の振動する音、生き物や物の気配。頭の中で、物の位置を把握していく。
すうっー……
風が一瞬止まった。
ざざっ、ざっ
カンッ!
一瞬の出来事だった。
彼の手に握られていたクナイが、数メートル先の的に正確に刺さったのは。
それはまるで空を切るようだった。その的確さに圧倒され、思わず感嘆の声とともに手を鳴らした。

「……サスケ?」

きょとん、という効果音が合っているような反応をし、こちらを振り向くのは兄であるイタチで。
先程まで的に全神経を集中していて、ぱちぱちと乾いた音に漸く気付いたのであろう。
いつものように修行をしようとやって来て、いつものように自分より先に修行をしている兄を見つけ、いつものように木陰に隠れてそれを見て。そして、いつもだったらそれに気付かず兄は家へと帰るのだが。
やってしまった。

イタチはいつもサスケが修行をする前に、ここで修行をしている。その事をある日偶然知ったサスケは、彼の修行する姿を見る事がいつもの楽しみになっていた。
それなのに、いつも我慢をしていた拍手を思わずならしてしまった自分に小さく舌打ち。あぁ、これから楽しみが減ってしまうのかな。なんて考えたら溜め息まで出てくる始末で。
ゆっくりとした足取りで木陰から出てくれば、イタチは漸く見つけたと言わんばかりにはにかんだ。

「サスケ、やっと出てきてくれたんだな」「……え?」

驚いた。ずっと気付かれていないものとばかり思っていたから。
それでも、彼曰わくイタチがこの時間帯に修行をしているということを初めてサスケが知った時から、イタチはサスケの存在に気付いていたらしい。
なんでも、隠れていたから普通に話し掛けるのは酷いかなと思ったらしい。
ずっと見てる事を知ってたのを隠す方が酷いと思ったが、恥ずかしさで赤くなったり青くなったりと落ち着く事ができなかった。

「…サスケ。今度は隠れてないで、一緒に修行しようか。」

ぼっ。落ち着く事ができなかった頬の熱が、一気に上昇した。
もう、これからはいつものような楽しみはなくなってしまったけど。
二人の視線が交わる時、今まで以上にこれからの楽しみが増えた、そんな気がした。



二人の視線が交わる様に




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好きだから、楽しみで仕方がなかった。これからも、ずっと。

フリリク感謝!



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