今日は1日修行して、修行して、修行して。少しでも早く兄に追い付いて、今まで守ってもらった分これからは自分が兄を守るんだ。そう心に決めた日から、修行へ取り組む姿勢が昔より良くなったと思う。 カッ。木に吊した的へクナイが数本、勢いよく刺さる。 母さんも守りたいし、父さんだって守りたい。欲をいえば一族の皆を自分が守るんだ。なんて目標には大きすぎる夢を抱いて。それでも一番叶えたい夢は、些細な言葉。 カカッカッ。数本の木に吊された的達へ、正確に刺さっていくクナイ。全て完璧だ、と思った瞬間一本のクナイが的を弾き、ぼすっと草の上へとダイブした。 ああ、これじゃ何も守れやしないじゃないか。兄ならこれ以上に凄いクナイ捌きを魅せるというのに。ゆっくりとクナイが落ちた場所へと近付き、まるで哀れ見るかのようにそれを見下ろした。 これは兄から貰ったもので、このクナイでだけは失敗はしたくなかったのにな、なんて脳内で呟けば小さな小さな溜め息を吐いた。 それはアカデミーを入学した頃だったと思う。偉大な兄を重ねて見られ、いつも比べられていた自分に、お前はお前だと言って貰ったクナイ。お前は俺には無いものを持っている、だからもっと修行をすれば俺なんてあっという間に超えられるさ。なんて言われたように感じて、凄く嬉しかった事を覚えている。 地面に申し訳なさそうに転がるそのクナイを手に取り、くるんっと一回転させれば割れ物を扱うように丁寧に握り締めた。そうすれば兄が側にいてくれて応援してくれている、そう感じたから。なんて言えば呆れられるかもしれない、それでも握り締める事を止める事ができなかった。 「……サスケ?」 はっと聞き覚えのある声がした。とても安心できて、とても大好きな声。思わず手に持っていたクナイをすっとズボンのポケットへと押し込んだ。 それから一呼吸を置いて、兄さん?と未だに姿の見えない相手へと話し掛ければ。すっ、といつの間に居たのか、突然後ろから抱き締められた。 やはり自慢の兄、気配を消すだなんてお手の物。俺はいつになったら兄さんを守れるのかななんて疑問は、ぎゅっ包まれる暖かな温もりにかき消されていった。 今のサスケとイタチでは身長の差がありすぎて、抱き締めやすいだなんてお世辞にも言えないと思うが、遠慮しなくちゃだなんて言葉は思い付かず。寧ろもっと強く抱き締めて欲しい、だなんて言葉が頭を埋め尽くしていて。 大好き。と脳内で呟き瞼をゆっくりと閉じれば、離さないでと言いたげにイタチの腕をそっと握り締める。イタチはその意図に気付いたのかいないのか、しゃがみ込みとんっとサスケの背中に頭を預ける。 どきどき。さっきまでの修行中の緊張感とは別の緊張感が脳内を巡り、ばくばくと爆発しそうな程興奮している心臓の音が鮮明に聞こえてくる。きっと兄も聞こえているであろう。そう思えば、恥ずかしさでもっと心臓の音が早くなった、そんな気がした。 ずぼっ。 「!?」 嬉しさと緊張で混乱していると、突然ズボンのポケットに手を突っ込まれた。何事かと思い首だけ振り向けば、その手は予想通りイタチで。ガサガサとポケットの中で動く手に、くすぐったさを感じながらイタチとポケットを交互に見比べる。 すると漸く探し物を手にしたのか、すっと引き抜かれる手のひら。ほっとしたのも束の間、ポケットから出てきたイタチの手に握り締められていたのは、大事なクナイであった。 そういえばポケットに仕舞ったままだった、と少しの後悔。イタチに貰ったものを何年間も大事に使っていると知られるのが恥ずかしいのだ。 わたわたと一人で言い訳を考えていると、イタチは何も言わずそのクナイを自分のポケットにすっと入れた。何故自分があげたものを自らが回収するのか分からず、又そのクナイはずっと持っていたかったのにという思いで、唖然と眺めるその光景。 すると、漸く抱き締める腕を外したイタチはサスケの肩を持ち、くるっと正面を向かせる。そしてじっと眺めれば、ぽつりと言葉を漏らした。 「サスケ、お前は何故強くなりたいんだ?」 「……え?」 唐突な事で、直ぐに言葉を発することができなかった。強くなりたい理由だなんて決まっているし、それ以上に叶えたい大切な言葉もある。 それを伝えたいとは思うが気恥ずかしくて、やっぱり伝えるのはやめようと何度思った事か。好きとか愛してる、とか。恥ずかしいながらも普段から伝えているそういった愛の言葉ではないが、とても叶えたいこと。 これこそがサスケの強くなりたい理由、そのものかもしれない。 「……俺は、強くなって皆を守りたい。兄さんだって、俺の手で…守りたい。」 「サスケ……」 「……………だって、兄さんに…ありがとうって、ちゅーしてもらいたい、から。」 ぼんっ。顔から火が出るなんて有り得ないと思っていたが、今はその言葉に納得できる。耳まで真っ赤にさせて、サスケは自分の服を握りながら下唇を噛み締め、複雑そうな顔をしてイタチを見上げた。 すると彼はぎゅっと再びサスケの小さな体を抱き締め、ちゅっと小さなリップ音を鳴らせ額にキスを落とした。そして、より一層真っ赤にさせるサスケに、はいっと可愛らしいリボンで縛られた先程イタチが取ったものとは別のクナイを差し出す。 え、え。とそのクナイとイタチの顔を交互に見ていると、ぎゅっと手を取られクナイを無理矢理握らされた。 「誕生日、おめでとう。」 俺より強くなったら、してあげるさ。と柔らかな笑顔でくしゃくしゃと頭を撫でられた。 だが、キスは何度もあげよう。 そう、ぽつりと耳元で呟くものだから。イタチが喋る度に耳にかかる息が艶を帯びており、恥ずかしくて、恥ずかしくて。その耳をばっと抑える。顔に上った熱が冷める事はなく、寧ろどんどん熱くなってきて。 先に帰っている、と伝え姿を消したイタチの背中をずっと見つめていた。 「……ばか。」 握られた新しいクナイに誓うように、そっと口付けを落とした。 この想いに誓えば ------------------------ 0727 サスケ、誕生日おめでとう! 4日遅れで、ごめん´` そして文章がぐだぐだすぎてすみません。ただ、子サスケに『ちゅー』と言わせたかっただけです。後悔はしてません← いつまでも兄さんと幸せに過ごして欲しいです^^ |