「旦那、なんだいこれは?」 今日は誕生日。幸い特別にこれといった任務もなく、部屋で粘土をこねていたデイダラのところへ突然やってきた相方兼恋人のサソリ。 恋人の誕生日に恋人のところへ来るものだから。元々期待なんてするだけ無駄なのだが、プレゼントを期待してしまうのが人間というわけで。 だが、只単に物が欲しいわけでは無い。それでも側にいてほしいだけでは物足りない。 表情はいつもどうり(だったと思う)だが、頭の中では期待でいっぱいいっぱいの顔でサソリを見つめると、彼も察したのか否か。すっ、と先程まで隠されていた右手をこちらへと差し出した。 その右手にしっかりと握られていたのは、 「何って、こいのぼりに決まってんだろ」 そう、彼の右手に握られていたのは恋人へ贈るプレゼントではなく。小さな小さなこいのぼり。確かに今日は子供の日なのだから、間違った判断ではないだろう。だが、何度も言うように今日はデイダラの誕生日。 もしも、これがプレゼントだと言われても正直な話、嬉しくない。 ま、彼にプレゼントを求めるなんて無謀な話なのだが、期待していたぶん落胆も大きかった。 デイダラはサソリの言葉に大きな溜め息を漏らせば、ふいっと彼に背を向ける。 背を向ける前に見た、彼の小首を傾げる様子に。サソリは何故喜んでいないのか分からないらしい。彼から見ればデイダラはまだまだ子供なので、こいのぼりを貰って喜ぶと考えたのであろう。 そのような憶測が簡単に浮かんできて、溜め息がより一層深くなった。 「おい、いらねぇのか?プレゼント」 「旦那、まさかオイラを馬鹿にしてるのかい?うん」 「は?ちげぇよ、今日誕生日だろ?」 だから、と声を上げて振り返れば。どこか不満気で、それでも寂し気な表情のサソリが目に入った。 いつも眉間に皺をつくってばかりな彼の、そんな複雑そうな表情の姿は初めて見る光景で。驚きと戸惑いで声が喉の奥で詰まってしまった。 「じゃあ、お前は何が欲しいんだ?」 「……一つだけ、オイラの我が儘を聞いてくれるかい、うん?」 ゆっくりと、まるでスロー再生しているように(実際はそこまで遅くはないが)ゆっくりと。 彼の右手にある、こいのぼりも後で貰おうと心に決めて、今本当に欲しいものを頭に浮かべ。 「オイラの年の数だけ、キスをちょうだい」 にっこりと笑みを浮かべて、彼に手を差し伸べれば。それに比例するかのように、彼も笑みを浮かべてその手を握り、引き寄せた。 愛を下さい ------------------------ 080506 泥ちゃん誕生日おめでとう! 結局、誕生日当日に間に合いませんでした(´;ω;`) 1日遅れで、ごめんよ。 そして、もっと甘々にすれば良かったかなと反省してます← |