"好きだ"
昨日、密かにずっと想いを寄せていた先輩に告白された。
先輩とは部活仲間で、ずっと片想いのまま同じバスケ部を一年間過ごしてきた。最初は、一目惚れ。自分が同性愛者だなんて思いもよらなかったけど、スリーポイントを決めた時の先輩の姿にとどめを刺されたようだ。
ずっと練習中の合間や、休憩の時に先輩を見つめては、一人で喜んでいた。
だから先輩に告白された時は、本当に夢なんじゃないかって思う程嬉しくて。ベタな少女漫画のような転回に笑いと喜びが同時に湧き出てきて。もう、どうしようもない程舞い上がっている自分がいた。

そして今。部活の時間が終わり、家に帰るための道端を歩いている。いつもと同じ景色に、いつもと同じ道。
どれもが同じなのだが一つだけ、いつもとは違うところがあった。
そう、隣にはサソリがいるのだ。
昨日付き合い始めたばかりだからであろうか、緊張して話し掛け難い。それは二人共同じなようで。口を開けようとして止める、この行動をお互いに繰り返してばかりだ(まぁ、二人共自分の気持ちで精一杯なので、相手が自分と同じ事をしているだなんて想像もしていないだろうが)。
そして、二人共頬をめいいっぱい染め上げて、あと少しで触れそうな手に歓喜と緊張の表情を灯すのだった。
(ただ、手を繋いで。って言うだけじゃないか、勇気を出すんだオイラ!)

「「……あの(……おい)」」

声が被った。
勇気を振り絞り(たぶん震えていたであろう)声を出したが、まさか被るとは思わなかった。
こうなれば、再び気まずい空気が漂い始めてしまう。どちらが先に言葉を発すれば良いのかだなんて到底分かる訳もなく(しかも、手を繋いで欲しいだなんて言い難い)。
それに、声が被ってしまったという事実だけで、何だか恥ずかしいような、くすぐったいような変な感覚に再び顔に熱が集中する。

「ほ、ほら。てめぇが先に言えよ。」
「い、いや。先輩が先に言って下さい、うん。」
「………。」

再びの沈黙。先輩が隣に居るというだけで嬉しくて恥ずかしくて嬉しくて。それなのに、頭の中が整理できなくて言葉が口から出てきてくれない。
地面を踏み締める音や道路を走る車のエンジン音、周りの人の声さえも耳に入って来ない。
この空間には自分と先輩しか居ないのではないかという感覚に陥ってしまう。
それなのにバクバクと鳴る自分の心臓の音だけは煩くて。

水蒸気が出てきそうな勢いで顔を真っ赤に染めるデイダラの目の前に、ふとサソリの手のひらが差し伸べられた。
すぐに理解が出来ないでいると、ぎゅっと自分の左手を握られる。

「手、繋ごう……と思って、な。」

ぎこちなく言葉を綴るサソリの顔を見上げると、自分と同じぐらい真っ赤に染め上げ、そんな顔を隠すように鼻をさする姿が目に入った。
そんな彼の姿が愛しくて、愛しくて。
一瞬、魅とれてしまった。
(オイラの望んでいた事は、先輩と同じだったんだ。)
デイダラは満面の笑顔で彼の言葉に返事をすると、握られた左手でぎゅっと握り返した。



青春パラメータ





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ウブな感じをもっと上手く表現したかったです。




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