ザーザーと降り止まぬ雨。無数の水滴が地面を叩きつける。 そんな中、その空を見上げるかの様にその中でじっと立っているイタチの姿があった。漆黒の髪を濡らし、ただただ見上げている。その瞳に写るものは何なのか、そんな事は誰であれ分かるはずもない。 「あれから、半年……か」 そう、苦痛の判断ではあったが自分の手により一族を滅亡させた、あの忌々しい事件が過ぎてから半年。里を抜け、自らが可愛がっていた弟に後の全てを託した、その日。 本当はそんな事をしたかった訳ではない。自分の弟に過酷な宿命を負わす為に、今まで可愛がってきた訳でもない。 純粋な眼差しでこちらに微笑みかけ、己の事を心から尊敬し愛してくれたその瞳を裏切る事は本望ではなかった。だが、全ては里の為。 イタチは小さく溜め息を漏らせば、地面に溜まっていく水たまりに目線を変えた。 溢れていく水たまりは雨が続くまでは歯止めがきかず、何処までも大きくなってゆく。これは己等の関係と一緒なのだろうか……? 自らが愛したものの憎しみがどんどん溢れ、己では背負いきれない程に膨れ上がる。 それを代わりに背負ってやることすらも出来ないなんて、まるで悲しい定。 今、お前は何をしているのであろうか。この水たまりのように、憎しみで溢れているのであろうか。 願わくば、昔の笑顔をずっと忘れないで……。 煩い雨音により、小さな小さな嗚咽はかき消されていった。 霞むあの日には戻れない ------------------------ 日記ログ。 |