月夜の光が静かな暗闇を照らす中、一つの家のドアがガラガラと開いた。漆黒の瞳に、漆黒の髪。服装は暗部の人間が着ているものと同じ。まだ肌寒いその季節に、イタチは静かに溜め息を漏らした。
今日は緊急の任務により、収集がかかったのだ。なので居間で眠っている親や弟を起こす訳にもいかず、こっそりと音を立てず、夢の世界から覚めないように気配も消して、ようやく玄関口にやってきたのだ。

正直、任務で人を殺す事は好きでは無い。もちろん例外もだ。人を殺め手を真っ赤に染めて、鼻に障る死臭を服や髪に染みつける時、自分でもどうしようもない罪悪感と悲痛な思いが込み上げてくる。
自分は忍だが、可愛らしい弟(すごく大好きな)を持っている一人の人間だ。感情なんて、そう簡単には棄てきれる筈も無い。それに、任務で弟に会えなくなるのは本当に寂しい。
だから、こういった緊急の任務が一番嫌いだった。

「……いってきま…」
「兄さん?」
「!」

驚いた。まだ寝ているとばかり思っていたから、否、思い込んでいた。だから、後ろからまだ幼さを感じる声と気配に、最後まで言葉を出す事が出来なかった。
振り返ると、そこには案の定サスケが居て。まだ眠たそうに、手で瞼を擦っている。片手には枕が握られており、ここまでズルズルと引きずってきたんだということが一目で分かった。
目を丸くしていると、サスケが(意識があるのか無いのか分からない程)虚ろな眼差しをこちらに向けた。

「兄さん、お仕事?」
「……あぁ、そうだよ。サスケは明日もアカデミーがあるだろう?もう、寝なさい。」

にっこりと笑みを向けて、未だに瞼を擦っているサスケの頭に、ぽんっと手を添え、軽く撫でてやる。すると、それが気持ちよかったのか少しの間、目を瞑り口元を微かに綻ばす姿が目についた。
……と思ったら、いきなり目をパッチリと覚醒させ、眉間に皺を寄せる。どうしたのかと思い小首を傾げると、サスケはぷくっと頬を膨らませ口を開いた。


「………やだ。」
「え?」
「だって兄さん、お仕事から帰って来たらいつも悲しい顔するもん。」

どうやらイタチが任務を嫌っていることを気付いていたらしい。イタチは困ったように笑えば、大丈夫だと再びサスケの頭を撫でた。

「……それに、」
「?」

「それに、兄さんのお仕事長いもん。兄さんが居ないと、寂しいよ。」

あぁ、やっぱり任務なんて嫌いだ。そして、サスケを何処までも悲しませてしまう、自分も嫌いだ。
泣き出してしまいそうなサスケの小さな体を抱き締め、まるで赤子をあやすように背中を一定のリズムでぽんっぽんっと叩いてやる。すると、それに安心したのかイタチの服を握りしめるサスケの目は、ゆっくりと閉じられていった。

そして、その手はゆっくりと離れていく。



寂しいは交差して






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任務をサボろうか一瞬迷ってしまった兄さん。
仔サスケは夫の帰りを待つ妻←




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