「なぁイタチ、」

いつからであろう、弟が俺の事を名前で呼び始めたのは。
彼が小さい頃は、もちろんそうではなかったし、今のように素っ気なくもなかった。昔は、兄にべったりとくっ付いたり、兄の真似をしたりしていた彼が、今では兄に頼ろうとせず自力でやり遂げるようになったのだ。それは別に良い事なのかもしれないが、それと同時に話す回数も減った為、こちらとしては嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちなのだ。
イタチはサスケの言葉に耳を傾けながら、頭の片隅でサスケから話しかけてくるのは珍しいな、と思っていた。

「漢和辞典もってねぇか?明日学校で使わなきゃならねぇんだ。」

「あぁ、」

イタチは机の棚にある本や辞書の方へと目を向け、必要な辞典を手に取る。そして、未だに部屋の中に入ろうとしないサスケの方へと目を向けると、此方へと手招きをする。
すると、渋々だがサスケが部屋の中へと足を踏み入れた。
久し振りに入るからなのか、サスケはまるで恋人の部屋に初めて入る時のように、少しの戸惑いと少しの期待が渦巻いている様だ。
その様子は見ていて可愛らしく、思わず頬が緩んでしまいそうになる。

サスケはゆっくりとした足取りで進んで行き、イタチの目の前に来て足を止める。その瞬間。イタチは、辞典を取ろうと差し伸べる彼の手をグイッと引き寄せ、軽く彼の唇にキスを落とした。
それは触れるだけのもので、触れて離れる瞬間に揺れる柔らかな唇に、少しの名残惜しさを感じる。
そして、その行動に驚きと戸惑いを隠せないサスケの手に、ぽんっ。と、辞典を載せてやる。
そして今度は、その無防備な彼の頬に再びキスを落としてやった。
その行動に漸く状況を掴んだ彼は、よほど恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤に染めて勢いよく部屋から出て行った。

……と、思ったら再びドアが開いて、


「辞典、ありがと。それと、俺も兄さんの事、好き……だから」



好きだと分かる様に






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大きくなったサスケが「兄さん」と呼んだら萌えるよね。という話←




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