瞳を閉じれば見えてくる彼の姿。オレンジ色の艶のある髪は背景の黒によく映える。そして顔中に付けられたそのピアスは、たくさんありすぎて見てる此方が痛々しい。そんな彼は世界に一人しか居なく、誰であろうかだなんて今更だ。
それでも彼を見れば、どこか寂しそうな、そしてどこか冷たい瞳をしていた。
どうしてそんな瞳をしているのかだなんて分からないし、分かってしまってはいけない、そんな気がしてしまう。彼はどこを見ているのか、何を求めているのか、目の前の彼の瞳からは到底読める事ではない。
それでも私は、彼に振り向いてもらいたくて、何度も言葉を口にする。

「ねぇ、こっちを向いて。」

何度も何度も言葉を繰り返す。
それでも彼は此方を見てはくれず、悲しみを帯びたその渦巻く瞳はずっと地面を見つめている。ずっと真っ暗な地面を見つめている。
そして私は、そんな彼の名をずっと呼んでいる。帰ってくる言葉なんて無いのは知っている。それでもただ、ただ、彼の名を口にし続ける。どうすれば彼が此方を見てくれるかなんて分からない。答えが見つからない。
私は、私は、ただ、ただ。

「……南」

どこかから声が聞こえてきた。その声はか細く、聞き取りにくい。それ故か何て言ってるのかすら分からない。
遠い、遠い。

「…小南」

今度は確かに聞こえた。私の名を呼ぶ声が。
誰?誰なの?
辺りを見渡しても、それらしき人は見当たらない。
なら、もしかして?

「小南!」

はっとした。
目を開ければ、見えてくるのは彼の瞳。さっきまでの寂しそうなものではなく、真っ直ぐ透き通るような瞳。それでも心配そうに揺らいでいる。
ぽろぽろ、ぽろ。
頬に何か液体のようなものが流れる感覚がした。辺りを見渡せば、薄暗いが確かにここが室内であると分かる。ということは雨が降っているわけではない。なら、この液体は?
小南が戸惑っていると、彼……ペインが親指の腹でその液体を拭う。そこで漸くこれが涙ということに気付いた。

「小南、俺はここに居る。」

ぎゅっと抱き締められれば、溢れてくるのは安心と安堵。途轍もない喜びが腹の底から湧き出てくるようだ。
小南は、そっと彼に身を委ねた。

(あれは不安から出てきた悪夢)
(引き戻してくれたのは、愛しい貴方)



悪夢が去れば




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まさかの夢おち。
そして最後までグダグダすぎました;





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