ざぁっ、と流れる風。それに髪を揺らせながら、イタチは足を進めていた。
今回の任務は長期に渡るもので、天才と謳われているイタチも流石に疲れが目に見えている。服は血と汗で濡れ、腕には擦り傷が何カ所かある。それでもイタチは足を休めずに、家に向かって歩いていく。
その途中で花畑を見つけた。赤や黄色など色鮮やかな花達が絨毯のように敷き詰められ、此方に微笑みかけているようだ。何の花なのかは調べないと分からないが、とても綺麗で思わず見とれてしまう。
この花を見ていると、ふと自分の弟の姿が頭をよぎった。そう、この花のように可憐で可愛らしい自慢の弟。いつもイタチが任務の時は、夜遅くまで起きていて、一番におかえりと言ってくれる。イタチはその言葉を聞くのが、楽しみなのだ。

そうだ、帰ろう。
家で弟が待ってる。

視線を花畑から外し、家へと続く先へと目を向ける。すると、その視線の先には見覚えのある人物が此方に背を向けて歩いていた。漆黒の髪に背中の団扇のマーク、そして自分とどこか雰囲気の似ている小柄の子供。サスケだ。アカデミーの帰りであろう。一人でゆっくりとした足取りで進んでいる。

「サスケ!」

気付いた時には己の足が動いていた。
任務の疲れなんて忘れてしまったかの様に、全速力で駆け出し、その小さな背を抱き締める。勢いで前に転けそうになるサスケを抱き締めながら抱えると、驚いたのか小さな悲鳴が聞こえてきた。
それでも、お構いなしに抱き締める。抱き上げながら後頭部あたりに自分のおでこを付けると、彼の足が地面から浮き、ぶらぶらさせているのが分かる。彼は戸惑いを隠せない様子でオロオロとしている。
それでも、数秒たったら落ち着いたのか、えへへと嬉しそうな声を上げればゆっくりと此方に振り向いた。

「兄さん、おかえり。」

その言葉に、今度は此方が驚いた。
とても好きな言葉で、とても聞きたかった言葉。
長期の任務を終えた後、帰ってきたんだな、と思える不思議な言葉。
だから、

「サスケ、まだお前も帰ってないだろう?」
「?」
「だからサスケ、」

おかえり。



素敵な言葉は日常に






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「おかえり」って深い言葉だと思います。





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