殺風景なこの狭い部屋の中。一応自分の家なのだが、安価なアパートだから狭いのは仕方がない。
その部屋の真ん中にある卓袱台の上には、この部屋に似合わないパンプキンケーキやらお菓子やらが広がっている。勿論ケーキは手作りではないが、ネットで探した美味しいケーキ屋さんで買ったもので。あまり知られてない店だったので、探すのには少し苦労した。
そしてそんな帝人は黒い服を纏い黒い尖り帽子を被っており、所謂魔女の格好をしている。
何故こんなことをしているのかと言うと、昨日学校で正臣が突然ハロウィンパーティーをしよう!と言い出したのだ。勿論、参加者は帝人と正臣と杏里。そして何故か、仮装をしなければならないそうだ。聞いてみたところ、その方が雰囲気が出るからだそうだ。そして、目の前に並ぶお菓子達は勿論割り勘で。
帝人はそれを眺めながら溜め息を吐き出すが、それでも満更でも無さそうに笑みを零す。
ピンポーン。
そんな事を考えていたら、突然鳴り響くチャイム。きっと正臣か杏里が来たのであろう。二人はどんな仮装をしてきているのか、少しだけ期待に胸を膨らませながら、そっと扉を開けた。

「ハッピーハロウィン、帝人!……って、」
「……あ。」
「被ってんじゃん!」

初めに目に入ったのは、金髪の明るい笑顔。そして次に目に入ったのは、黒いコートに黒い尖り帽子。正臣も仮装は魔女をチョイスしたらしく、自分と思いっきり被っている姿に何だか可笑しかった。
笑いながら正臣を中へと迎え入れば、彼も笑みを零し中へと入る。そしてお菓子の並んだ卓袱台の前へ座り、帝人も隣に腰を下ろした。
そして仮装の話やら学校の事、昨日みたテレビの話やら。そんな他愛ない話に花を咲かせ、正臣が帝人の肩を抱いた時、ぴたっ。と時間が止まった、ような気がした。

どきどき、どきどき。なんて突然煩く鳴り始める心音に、緊張して強張る身体。ちらりと彼の方を見れば、彼も緊張しているのか、耳まで真っ赤に染めている。
少しずつ刻んでいく時計の針だとか、外を走る車の音だとかが煩く感じる。
お互いに好きだと告げたのは、つい一週間程前。未だに慣れない緊張感と、彼と居る時の幸福感。
そっと彼の手のひらに自分のものを添えれば、ぴくりと反応する。それでもお互いに指と指を絡め合い、そっと微笑み合った。
トリックとトリートなら、勿論トリートの方を選びたい。甘い甘いお菓子も良いけど、この甘い甘い瞬間に溶けていたい。そっと二人の影が重なろうとした、その時だった。

ピンポーン。
突然鳴り響くチャイム。
二人は一気に顔を離して、真っ赤な頬を紛らわすように帝人は部屋の扉を開けた。
すると扉の前に居たのは、案の定杏里で。初めに目に入ったのは、思わず魅入ってしまう程の綺麗な微笑み。そして次に目に入ったのは、黒いコートに黒い尖り帽子。それはまさに天使のような魔女の姿で。
三人はそれぞれの仮装姿を見て、数回瞬きをし、思いっきり吹き出した。
まさか三人とも同じ姿を選んでくるなんて思ってもみなくて。それが何だか可笑しくて、可笑しくて。
それでもそれがとても自分達らしくて。
三人は互いに微笑みあい、卓袱台の上にある大量のお菓子達に手を伸ばした。




悪戯如何




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帝人×正臣+杏里
来良組の絡みが大好きすぎる^^

2010/10/31
Happy Halloween!







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