いつもと変わらない風景に、いつもと変わらない日常。
いつものように彼に接して、いつものようにナンパ三昧。でもナンパなんて只の言い訳でしかない。この胸に秘めたこの想いを紛らわす為の手段でしかない。
一緒にお茶しませんか?
なんてお決まりな台詞を吐いた後、帰ってくるのはNOという返事。断られると分かってるからこそのナンパ。
気付いて欲しい、でも気付いてほしくない。
正臣はナンパし、断れた直後、くるりと幼なじみである帝人の方へと振り返った。帝人は心底呆れたような顔をしながらも、くすりと笑みを見せている。そんな彼にどきりと胸が高鳴った。
不毛な恋だとは分かっている。それでもこの想いは捨てきれなくて。だから、俺は。

「も〜、正臣これで何度目?園原さんも帰っちゃったよ。」
「何を言ってるんだ竜ヶ峰帝人。五、六回断れたくらいで音を上げては健全男子学生の名に廃ってしまうぞ!」
「……言ってる意味分かんないから。」

これで何度目が分からない溜め息をつく帝人。
呆れながらもきちんと反応を示してくれる、そんなところも好きな要素の一つだ。
正臣は小さく溜め息をつき、帝人の肩を思いっきり叩く。
いたっ、なんて声を上げる帝人から逃げるように、テンションを上げて再びナンパへと立ち上がった。
好きだけど、好きなんて言わない。彼とはずっと親友であり幼なじみでありたいと思うし、好きな人には変な目で見られたくないから。
曝け出したい想いを胸に閉じ込め、理性という名の鍵を閉める。苦しいが、彼の隣を歩けるのだと思えば、我慢できる気がした。

「やぁ、君たち。奇遇だね。」

と、その時。俺の最も嫌いな人に出会ってしまった。
その声を聞けば嫌でも誰だかなんて分かってしまい、振り返れば案の定それは折原臨也で。
上がっていたテンションなんてものは一気に下落する。
思わず口元が引きつる。そんな正臣とは裏腹に、帝人は警戒心なんてものは無く。ご丁寧に挨拶までする始末。
あああこの馬鹿!
なんて内心ひやひやしながらも、どうやってこの人から逃げるかを考えていた。

すると突然臨也は正臣の肩に手を乗せる。思わず大袈裟に跳ねる肩。
そんな正臣の反応に気を良くしたのか、臨也は嬉しそうな可笑しそうな笑みを零す。
どうしようという言葉が頭の中で渦巻いていれば、突然帝人が正臣の肩の上にある臨也の腕を掴んだ。
一瞬、帝人に何か黒いものが見えたが、その意味を理解する事が出来なかった。

「すみません、迷惑なんでこの手離してもらえませんか?」
「何を言ってるのかな、帝人君こそ離してもらえない?」
「……はっきり言いますが、邪魔しないで下さい」

あれ、帝人ってこんなキャラだっけ。
正臣は目の前で起きている、この状況に上手くついていけず。
見えない火花を撒き散らす二人に挟まれ、ただ溜め息を吐き出す事しか出来なかった。




まず初めに状況の説明を求めます




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帝←正に見せかけて、臨→正(→)←帝でしたという話。






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