放課後の教室。今、教室には正臣しか居ない。
外では部活動に励んでいる生徒達の声が聞こえてくる。その様子を窓から覗きながらも、正臣は小さな溜息をついた。
なぜ今、正臣が放課後の教室に一人で居るのかというと、それは今日の朝に遡る。

朝、正臣はいつもと変わらない通学路を通り、いつもと同じような場所で帝人を発見し、二人でいつものように杏里を見つけて三人で学校に入る。それがいつもの通学パターンだった。
しかし今日は帝人を発見する前に友達である滝口に声を掛けられ、そのまま二人で会話を弾ませ登校したのだ。
二人には途中で会ったが、帝人の顔が少し怖かったので、いつものように軽口を叩いてスルーしておいた。
すると、一時間目の授業中に帝人からメールが届き。授業中にメールするなんて珍しいな、と思いながらそれを開けば。
そこには、放課後教室で待ってて。とシンプルに書かれた文字列。
朝一緒に登校出来なかったから、放課後は絶対一緒に帰りたいのかな。なんて想像し、嬉しさのあまり授業中だという事を忘れて、頬を緩ませて机にうつ伏せになった。

そして、放課後。
クラスメイトも帰ってしまい、物気の空と化した教室に一人残っている。
話し相手も居ないし、何をする事も無いので、とても暇だ。
遅くなるなら言って欲しかったな、なんて小さな文句。正臣は再び小さく溜息をつけば、机にうつ伏せになる。
そのまま寝ようかとも思ったが、彼がいつ来るかも分からないので目は開けたままで口を小さく尖らせた。

「……帝人ぉ、早く来いよなー…」

小さなその言葉は誰も居ない教室に響き、誰の耳にも入る事の無く消えていく。
うつ伏せた頭を少しずらし、顔だけ起こせば未だに来ない帝人に悪態を付いた。
今日は彼に殆ど会っていないような感覚に陥る。実際には休み時間や昼休みでも会って、会話を楽しんだのだが、彼と二人っきりで会話をしていないのだ。
いつもは朝に彼と二人っきりになれるのだが、今日は滝口と登校したので帝人と二人きりにはなれていない。
彼との時間が少ないと、こんなにも辛いものなのか。と、改めて彼との過ごす時間の偉大さが分かった気がする。
ただ二人きりになれなかっただけで、こんなにも彼の事で頭がいっぱいになってしまうのだから。

「あいつは、何考えてんだろーな…」
「僕はいつでも正臣の事を考えてるよ?」
「!」

突然の事で思いっきり肩が跳ねてしまった。教室の扉付近へと急いで視線を変えれば、いつから居たのか先程まで考えていた人物がこちらへと進みながら小さく微笑んでいた。
驚いたが、その感情は直ぐに歓喜に代わる。勢いよくうつ伏していた体を起こせば、自然と満面の笑みが零れる。
座っている椅子から立ち上がり、そのまま彼に飛び付きたかったが、それは彼の行動により遮られる事となった。
にっこりと微笑む彼は正臣の前の席に正面に向かい合うように座り、そのまま手を取り。
ちゅ、と控え目なリップ音を立てて、近かった顔が離れていった。キスをされたという事に気付いたのに数秒たってしまった。
目を丸くして彼を見れば、綺麗な瞳と目が合った。
そして、ぎゅっ。と強く抱き締められる。いつもの控え目な彼と全く正反対な言動に戸惑いを隠せず、頬が一気に赤く染まっていく。

「み、帝人…?」
「ごめん、もうちょっとだけ」

そのまま先程より強く抱き締めるものだから。顔の見えない彼に向けて小さく微笑めば、そっとその体を抱き締め返した。




たまには本気を出しましょう




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帝人からガンガン攻めていこうぜ!をテーマにしたが、攻め切れていません帝人様←





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