頭がガンガンと唸りを上げる。今が授業中だなんて事も忘れ、机に頭を付ければ小さな溜め息。 その息がとてつもなく熱くて、ぼーっとする頭で風邪を引いたということを理解する。 黒板に書かれている数列を説明する先生の声なんて聞こえない。痛みの止まらない頭痛に、周りの声など耳に入ってこないのだ。 机におでこを付けて擦りよれば、ひんやりととした無機物がとても気持ち良い。そのまま自分の熱をそれに移し、おでこを少しずらす。 そんな事をしても只の焼け石に水なのだが、今はそれ以外にこの痛みを和らげる方法が見つからなかった。 すると隣の席の男子が、いつも煩い正臣の様子に異変を感じだのであろう、助け舟を出してくれた。彼は手を上げて授業を中断させれば、先生に正臣の様子を伝える。 すると先生も慌てたようにこちらに寄ってきて、心配の声を上げて保健室に行くように促してきてくれた。 がんがんと頭の奥に響く痛みに、これ以上授業に耐えるのは苦痛だった正臣は痛みに顔をしかめながらも心の中で胸を撫で下ろす。 保健室に行くように進める先生の言葉に頷けば、ゆっくり机から体を起こしす。そして、保健委員の生徒に支えられながらもその場に立てば。 何故か教室内がざわざわとざわめき始めた。 何事かと思ったが、今はそんな事に耳を傾ける余裕もなくて。痛みの治まらない頭を抑え、ふらふらと足をふらつかせながらも前へと進もうと一歩足を踏み出した。 その時。 ぼふっ、と誰かにぶつかってしまった。 と、思えば。突然の浮遊感。 突然の事に目を丸くさせて顔を上げれば、一番最初に目に映ったのは大嫌いなアイツだった。 「え、あ……え?いざ、や…さん?」 「王子様登場、ってね」 正臣は戸惑いの隠せない顔できょろきょろと、ここに居るはずのない臨也と教室内を見比べる。 教室内の生徒達は勿論、先生までも唖然としてこちらを凝視している。 痛む頭に顔を歪めながらも上を向けば、ぱちりとにやにやと笑みを浮かべる臨也と目があった。異様に近いその顔に目を見開き、そこで漸く自分がお姫様だっこをされているという事に気付いた。 気付いてしまえば一気に顔へと熱が集中してしまう。 それでも頭の痛みと体のダルさに、暴れて無理矢理にでも逃げるだなんて事が出来なくて。 顔を真っ赤にさせて、何の抵抗もしない正臣に彼は気分を良くしたのか、くるりとステップを取りながら教室の扉へと進んで行く。 未だに唖然としている先生や生徒達なんて眼中にないのか、彼は正臣を抱えたまま教室を後にした。 まだ授業中なので、廊下は静まり返り声なんてものが聞こえない。 そんな中、正臣は臨也の腕の中に居る事なんて気にも止められない程痛みを訴える頭を抑え、荒い呼吸を繰り返す。この腕の彼の表情が少しの心配と少しの楽しさに帯びていた気がしたが、すぐに頭が痛み考えるのを止めた。 とん、とん。と軽快に階段を下りていく。その振動で落ちそうになり、正臣は反射的に彼の首へと腕を回した。 「おやおや、今日は随分と素直だね」 自然に動いてしまった腕も、頬が自然と赤く染まってしまうのも全て頭痛できちんと頭が働かないせいだと、頭の中で呟いた。 全て風邪のせいなんです ---------------------------- ツッコミ所満載ですが、そこはスルーの方向で← |