「帝人、勝負だ。」
「……何の?」

ヤカンが鳴るまで背中を向けたまま、相手の顔を自分以上に真っ赤にさせたら勝ち。
なんて、早口で言い放つ。帝人は呆れながらも、そんな正臣に、キスじゃだめ?と小首を傾げるものだから。それじゃ勝負にならない、と思いっきり背中を向けてやった。
ここは帝人の住んでいるアパートの一室。
本当は恋人の部屋で二人きりという状況に緊張と、恥ずかしさで目を合わせる事ができなくて。
だからゲームというのはただの言い訳。
帝人に背を向けたままその場に座れば、背中から溜め息が聞こえ、少しの不安に手のひらをぎゅっと握り締める。
すると、とん。と背中に何かが触れた。
小さく振り向けば、それは彼の背中で。それと同時に合った彼の微笑みに、どきりと胸が高鳴った。
二人は同時に顔を戻し、お互いに背中合わせの形となる。

どきどき、ばくばく。
どきどき、ばくばく。

心臓の音が煩い。
背中にある彼の感触が暖かく、そっと手の甲に被さる同じくらいの大きさの手の感触に心臓が跳ね上がる。
お世辞にも立派だとは言い難い安価なアパートの一室。学校が終わった後、帝人の家に来たわけだから、当たり前なのだが二人とも制服姿のままだ。
コポコポとヤカンを沸かすお湯の音が、シンとした空間に大きく響き渡る。
窓から覗く夕焼けの淡い光に目を細め、それに比例するように口はだんだんと強張っていった。

きっと彼の目を見れば、これ以上の緊張と愛しさにどうにかなってしまいそう。
(どうしよう、どうしよう。)
ばくばくと激しく鼓動する心臓に、背中からでも彼に伝わってしまいそうだ。正臣の手の甲に被さる帝人の手のひらは、何かを探るように動きはじめる。
それがなんだかくすぐったくて、少し笑みを漏らせば火照る顔が更に暖かさを帯びていくのが分かる。
そして、彼の手のひらは正臣の指と指の間に、指と指を入れてゆき。そのまま、きゅっ。と小さく握った。

あぁ、可愛いな。なんて片隅で感じながら、背中に感じる彼の背中に少しだけ背中を預けた。
すると彼の肩がぴくり震え、それが面白くて目を閉じて彼の肩へと首を軽く預ける。
彼の髪に自分の髪が触れて、彼の香りがふわりと鼻をさすった。帝人の、安心できる香りだ。なんて馬鹿みたいな事を感じながら、幸せを一つ一つ噛み締めていく。
この時間がずっと続けば良いのに。なんてよくある台詞だが、今はそう思わざるえなかった。

その時、カタカタと蓋をばたつかせながらピーピーとうねり始めるお湯の入ったヤカン。
それを合図に、二人の背中はそっと離れた。
幸せな時間が終わるのは本当に早いな、なんて少し口を尖らせながらもヤカンを止めに腰を上げた帝人の背中を見つめる。
カチ、とコンロの火を止めた帝人が徐に振り返ると、パチリと目と目がシンクロした。

「……帝人、」
「……正臣、」

そしてお互いに真っ赤に火照った頬を指差し、くすりと笑った。

「赤くなりすぎだよ」



火照ほてゲーム




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