本日、晴天。
気持ちの良い程、雲の無い綺麗な青が広がる空を背中に、正臣は両腕を両腕を軽く伸ばした。そして、その両腕をそのまま頭の後ろで組み、くるりと一回転する。
先程、退屈な学校が終わりを告げたばかりで、これから隣で歩く帝人と一緒に居られると思うだけで心が踊るようだ。

正臣と帝人は恋人という関係だ。帝人が池袋に来た次の日にお互いに惹かれあっていたことを知ったのだ。
正臣は沙樹の事が一瞬よぎり、どちらを本当に好きなのか悩んでいたが、帝人の告白という後押しで二人は恋人という関係にランクアップしたのだった。

正臣はいつものように、どこ行きたい?とかやっぱりナンパに行くか?とか。そんないつもの言葉を嬉しそうに紡いでいく。
そんな正臣に帝人は、嬉しそうに微笑みを浮かべ、悩むように小さく唸る。
そして数歩、歩いた時。
今まで言うのを躊躇っていた事に決心がついたのか、帝人は自分に言い聞かせるように小さく頷き唐突に正臣に真剣な眼差しを向けた。

「ねぇ、紀田君。僕が上、だよね。」
「は?」

あまりの唐突さに何を言っているのか分からなかった。
予想外の言葉に混乱して、思考が一時停止している正臣を知ってか知らずか。どこか嬉しそうに帝人は昨日のチャットの内容を思い出していた。

昨日、いつものように定時にチャットに入り、会話を楽しんでいた時。
帝人は、正臣と恋人となったばかりで童貞の自分が男同士でどのようにセックスをすれば良いのか悩んでいたことを思い出したのだ。そして、それをチャットの皆に相談してみれば、いち早く食い付いてきたのが甘楽さんだった。
そして、甘楽さんがあまりにも興味津々にどちらが女性側でどちらが男性側なのかを聞いてくるものだから。思わず自分が男性側だと言い張ってしまったのだ。

帝人はそんな事があった事なんて微塵も知らない正臣にめいいっぱいの笑顔を向けて、ぎゅっと彼の腕を握り締める。
正臣は未だ混乱しているのか、え。え。と帝人の腕と顔を交互に見比べる。

「昨日チャットで相談したら、どっちが上でどっちが下かって聞かれたんだよ。」
「……ちょっとまて帝人。話に着いて行けないんだが。」
「僕、童貞だから紀田君みたいに上手くないけど、紀田君も処女だから、関係ないよね」

混乱している正臣を置いて、つらつらと話を進める帝人。
楽しそうに話す彼が、純粋に悩んで純粋に話しているのは一目瞭然。だから、質が悪い。
ああ、もう。本当にコイツは眩しい程純粋で困る。
正臣は諦めたように、深い溜め息をつけば、それに比例するかのように帝人が目を合わせ声を上げた。

「あ、僕行きたい所があるんだ。」

紀田君の家!
なんて、聞こえなかったフリをして。冗談だと思い込み、いつものようにど突いてやった。



冗談。冗談、だよね。




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帝人は黒い訳ではないです。心の底から純粋に悩んでいるのです←





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