(学パロ)


 出会いとは、人それぞれが備え持つ偶然の積み重ねにより生まれた現象の一つ、だと思っている。それが重要か否か、大切かそうでないかは、それも人それぞれ。ならば、今目の前に居る彼との出会いは、どういったものに部類されるのだろうか。
 カラン、とコップの中にある氷を鳴らし、そっとそれに口を付ける。冷たい水が喉を潤し、腹の中へと浸透していき、零れ出る小さな溜め息。机に置いてあるお盆の上には、先程まで大盛にあった学食は空になり、米粒すら残っていないお椀が堂々と置かれている。
 ミラはそれを片付けるわけでもなく、ただただ水を飲んではコップを机に置くという繰り返しを続けている。そんなミラを頬杖を付いて眺めているのが、この学校の保険医であるアルヴィンだった。
 彼は学食を食べるつもりが無いのか、ミラが食べている時に目の前に座ってからずっとミラを見ているのだ。何か用かと問えば、別にの二言で会話が終了。何とも気まずいので、彼を無視して今に至るのだが、込み上げる溜め息の数が減ることはなかった。

 ミラはこの学校に転入して来たばかりなので、まだとても仲良しな友達が居なく、昼休みの時間はいつもここで時間を潰している。突然来た彼も今に飽きて、どこかへ行くだろうと踏んでいたのだが、一向にここを離れる事のない彼に小さな疑問だけが生まれてくる。
 どうしてずっとここにいるのか、どうしてずっと見てくるのか。再び込み上げた溜め息は、そのまま空気中に拡散していった。

「で? おたくさんは、いつまでここに居るつもり?」

 驚いた。話しかけても二言で終わらす彼から話し掛けてきたから。
 まさか話し掛けられるとは思わなかったので、声が裏返りそうになりながらも、ミラは瞬きを数回繰り返した。

「……何を言ってるんだ、それは私の台詞だ」
「細かいこと気にすんなって」

 ははは、と笑みを零しながら右手をぶらぶらと宙に揺らす。本当に先生なのかと問いただしたくなる衝動を抑えながらも、そっと水を口の中へと流し込んだ。
 気付けば辺りに居る女の子の視線はアルヴィンに集中しており、どうやら彼は人気があるのだと認識できる。こんなに人気ならば、他の女の子に話し掛けた方が喜ばれるのではないかと思ったが、何故かそれを口にする事はなかった。
 一通り目で辺りを見渡し、そっと彼へと視線を戻せば、思わず息を飲む。先程とは一変して真剣な表情で瞳を向けており、ミラは瞬きを繰り返してから再び目を逸らした。
 ──吃驚した。いきなりそれは、反則だな。
 何が反則かなんて分からないが、なぜかその言葉が思い浮かんだ。周りの雑音が自分の雑念に掻き消されていく。
 この感情は知らない知らない、知らない。

「暇なら保健室に来ないか? 俺、今暇なんだよ」
「保健室? 私は怪我をしてないから行く必要は無いだろう」
「ま、気が向いたら遊びに来いよ」

 彼はそう告げれば、そのまま立ち上がり背中を向けた。ぽつんとその場に一人残ったミラは、コップに口付けてそれを傾ければ、既に空になっていたそれをそのまま机に置いて溜め息一つ。
 彼が去っていった方向を眺めながら、そっと胸に手を当てて小さく小首を傾げた。

「一体、何だったんだ」




これは何という名前のシチュエーションですか




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初、アルミラ学パロ!
ミラ様の学生服のコスチュームが可愛すぎて可愛すぎて…!



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