「ジュード、安心しろ。すぐに帰してやるからな」

 また、だ。また彼女はそうやって一人で背負おうとする。分かっている、本当は。彼女が深い意味を込めて言葉にしている訳ではないと。仄かな淡い金色を纏う剣から流れる四大精霊の光が彼女、ミラの美しいその姿を輝かせた。まるで光と踊っているような仕草で、凶暴な魔物達を切り倒していく。
 出会って間もない筈なのに、どうしてかその姿から目を離すことができない。早く帰りたい筈なのに、ハウス博士の死を目の当たりにして胸の内から溢れる悲しみで今にも崩れてしまいそうな筈なのに、彼女の言葉を耳にするだけで胸が締め付けられる程痛くなってしまうのは何故だろう。突然たくさんの事が起こって混乱しているのであろうか、それとも、それとも。
 ジュードは小さく首を左右に振れば、敵を全滅したミラの元へと足を進めた。剣を鞘へと仕舞うその姿を見ただけで何故か目眩がする。真っ直ぐに先を見つめるその瞳は、しっかりと前を向いており、その安定した決心に思わず息を呑み込んだ。彼女に守られるだけでは嫌だ、この拳で彼女を守りたい、その信念を守ってあげたい。そんな事を思い、ふと足を止めた。
 ──あれ、僕はどうしてそう思うんだ?
 まだ会って間もない彼女に、どうしてそこまで思う事ができるのだろうか。自分の感情なのに、答えが全く見えなくてポツリと疑問が床に落ちた。右手で顎を支えて床を眺めながら、その疑問の答えを頭の中で探っていれば、前を歩いていたミラの靴音が鳴り止む。と、思えば急に大きくなる靴音。

「──え?」

 鋭い光が頬を掠め、背後から鈍い断末魔が響き渡る。後ろで崩れた魔物を確認して、その瞬間目を見開いて声を呑み込んだ。
 馬鹿か。呆れたような安心したような溜め息混じりの声がして、魔物から目線を外せば、再び目を見開いた。ミラの綺麗な顔が、あまりにも近かったから。一気に早くなる心拍数。じっと見据える彼女の瞳に吸い込まれてしまいそうな感覚に、胸の奥が熱くなる。

「……ミ、ミラ?」
「はぁ、君は馬鹿か? こんな所でぼーっとしても、それは度胸があるとは言わんぞ」
「ご、ごめん」
「ふむ。まぁ、無事なら良いんだ」

 さぁ、行こうか。
 差し出すミラの手のひらと、小さく笑うその表情を数回瞳だけで見比べば、何だか自分がどうして会ったばかりの彼女を側で守りたいと思う理由が分かったような気がする。彼女の手を取りながらも、ジュードもほくそ笑んだ。




初めまして君と恋




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初、エクシリア文章です。
ジュ→ミラで、ジュードが自分の恋に気付いた話です。




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