「では、戦闘開始だ!」
「買い出しの、だろ」

 今日は晴天。急いで先を行きたいところだが、グミなどの道具や料理が切れてしまい、流石にそのままでは次の街に進む事もできないので、ついでに体を休める為に今日は宿で休憩をとる事になった。
 道具の買い出しはいつもローテーションで決めており、今日の買い出し当番はミラ。皆から、買ってきて欲しいものを並べた紙を渡されて意気揚々に宿を出たのだが、彼女の世間知らずさは皆が認める程なので最後まで一人で大丈夫かと心配されていた。かく言うアルヴィンも心配をしている仲間の一人で、本当は一人で街を歩き回る予定だったのだが、足が勝手にミラの方へと歩いて行き、今に至る。

 闘技場から聞こえる歓声が、橋の向こう側まで聞こえてくるような感覚。いつ来てもその興奮は凄まじく、そして何とも言えぬ熱を持っている。そっと母親が寝ている家を見上げた。そこはいつ見ても変わらぬ殺風景さに笑みさえ零れなくて、視線を戻した先にあるミラの背中を眺めて小さく舌を打った。
 どうして彼女がマクスウェルなのか、そんな意味の無い疑問を浮かべては勝手に落ち込んでいく。もしも彼女がマクスウェルでなければ、なんて。自分らしくない弱音を紛らわすように溜め息を吐き出せば、ミラから預かった買い物リストに目を向けた。
 見慣れたグミやボトルの文字に、再び溜め息を吐き出した。簡単に言えば、量が多いのだ。早速、どこで買えば良かったのかと聞いてくるミラに、ついて来て正解だったなと肩を落とした。
 それに加え、いつもより今日は人が多い。はぐれないように彼女の頭で揺れるアホ毛へと意識を集中させていれば、突然手のひらを握られた。その先を目で辿れば、案の定ミラで。あまりの唐突さに、瞬きを繰り返した。

「ちょ、何して……?」
「ん? こういう時は手を繋ぐと良いと本で読んだんだが、違うのか?」

 小さく小首を傾げる彼女は、マクスウェルでも何でもない普通の女の子にしか見えない。アルヴィンは目を逸らし、その手を振り払おうとして、止めた。
 逸らした先に映ったのは、ミラを見ている通行人達。彼らがアルクノアのように殺そうとせんとする目でなく、彼女に好意の目で見ている事は一目瞭然。
 確かにミラは人離れした美しさを持ち寄った容姿や、そのオーラを身に纏っており、視線が彼女に釘付けになってしまうのも分かる。それでも何となく、それが気に入らなくて。離そうとした手のひらを、そのまま強く握り返した。

「いや、違わないな」
「そうか、なら行こうか!」

 ぎゅっ、と指と指を絡め取るように手を繋ぐ彼女に、一体どんな本を読んだのか気になったが、それも満更でも無く。今は彼女がマクスウェルだとかは忘れて、この手の温もりをそっと堪能したかった。




今だけはこの幸せに浸っておこうか




--------------------------------------------------
アルミラを書くと、どうしても切なさが顔を出す。
だからこそ萌えるのだがな←




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -