憂鬱気取りなメロドラマ



(海賊 SW絡み)



「さっきからなんだってんだっ、てめェ…!」
「別に、お前はただ気持ち良くなってりゃいいんだよ」
正面からゾロの足を割り開き、サンジは掴んだ足首にそのまま噛ぶりついた。べろりとくるぶしを舐め上げれば、きゅうっと切なげに指が締めつけられる。絡みつく粘膜の抵抗を無視して緩慢に指の抜き差しを繰り返し、勝手知ったるゾロのいいところを避けてわざと曖昧な愛撫を繰り返した。
両足首や胸の大傷といい、つぎはぎだらけのゾロの身体は今、白いシャツと対照的な黒いベストの下に隠されている。ゾロはネクタイを緩めることすら許されず、下半身だけ何も身につけていない状態だった。
サンジはそんなゾロの姿を前にごくりと生唾を飲む。全く乱れることのない上半身とは対照的に、乱れた下半身はひどく扇情的だ。
上下ともかっちりスーツを着込んだままのサンジは、まるで性器にするのと同じようにゾロの足首の傷にねっとりと舌を這わせた。は、は、と荒く呼吸を繰り返すゾロは、恨みがましそうに潤んだ眸でサンジを睨みつける。
そんなゾロの様子に、まだまだ余裕そうだな、とサンジはまだ充分にほぐれていない襞の中に指を増やした。それまで避け続けていた中のしこりを擦りあげてやれば、ゾロの腰が大きく跳ね上がる。指の腹で前立腺を押し、周囲を撫で、上下左右、様々な方向から攻め立てていく。
まだ一度も触れていないゾロの性器は固く張り詰め、折角のシャツをぐずぐずに汚してしまっている。ぷくりと、尿道の先からまた雫が溢れ出す様を眺め、サンジは眉をしかめた。
「イき、てえ…!」
「だめ」
限界だと腕を伸ばしたゾロの手を取り、サンジはその指先に優しく唇を落とした。筋張った男の手を愛しく感じるようになったのはいつからか。
射精感を煽るようにゾロの性感帯を狙い、中で指をバラバラに動かしていく。中だけではまだイくことのできないゾロは、もどかしそうに腰を揺らしていた。
「あとでちゃんと触ってやるから、いい子で待ってな」
「あっ、くそっ、んん、やろう」
そんなに可愛く、喘ぎまじりに罵声を浴びせられたところで、煽る結果になるだけだとサンジは苦笑を零す。
今度は逆の足を掴み上げ、体毛の薄いゾロのふくらはぎに吸いついた。体勢が変わったため、指がいいところに当たったのか、ゾロの身体が大きく跳ね上がる。可愛い、と甘く囁いても、ゾロは心底嫌そうに顔を歪めるだけだ。
ひくりと収縮を繰り返すその場所に三本目の指を入れた。なんなく呑みこまれる様を、言葉にしてゾロに教えてやる。もう悪態をつく余裕もないのか、ゾロは断続的に甘い声を上げるばかりだ。
傷跡が両足とも同じ形をしているのは、ゾロの剣の腕がいいからか。指先で一度そこを辿り、確かめるように隆起した場所を啄んだ。

サンジは常々、ゾロの行動を正気じゃない、狂っていると評していた。拘束を解くために両足を切り落とそうとするだなんて、頭がおかしいとしか言いようがない。
金獅子のシキはそれを、監獄から逃れるために平然とやってのけたのだと、酒場で情報を聞いたロビンが討ち入り前に教えてくれた。それを聞き、サンジが真っ先に思い出したのはゾロのことだった。
両足から伸びる刃物は趣味が悪すぎた。ゾロの足首に噛みつきながら思う。
シキは逃げるため。ゾロは、戦うために。脳裏には、義足をつけたゼフの姿が浮かぶ。ゼフは、生きるため、だ。
サンジはきつく瞼を閉じ、腹の底で気持ちの悪い何かが渦巻くのを感じていた。
「分かんねェ」
言葉にしてみて、ますますサンジの頭は混乱する。なんでこいつらは、こんなに平然としていられるのだ。手も足も、何があろうとくれてやるのはごめんだと、サンジは顔を歪める。それに、手を切り落とすぐらいなら死んだ方がマシだ。
物足りなげに収縮を繰り返す中から指を引き抜き、ゾロの両足を抱えた。身体に乗り上げ、額に浮かぶ汗の粒を吸い取ってやると、ゾロは怪訝そうに眉を寄せる。そのことに気がつきながら、サンジは薄く開かれたゾロの唇に噛みつこうとした。
しかし、ゾロに力任せに突き飛ばされ、サンジは硬い床の上に思いきり尻もちをつく。強打した尻を擦りながら、気だるげに上体を起こしたゾロに向け、何すんだ! と声を張り上げた。
そのとき深々とため息を吐かれ、サンジは頭に血が上るのを感じる。面倒くせェ野郎だな、呆れたように告げたゾロの言葉に顔をしかめた。
「どうせまたごちゃごちゃろくでもねェこと考えてんだろうが、面倒くせェんだよ。クソコック」
「なっ…! おれが、どんなにっ、おめェを…!」
言いかけて俯いてしまったサンジをまっすぐに見据えたゾロは、がしがしと乱暴に頭を掻いた。それは、ゾロが困ったときや呆れたときにやる仕草だった。今回はどう考えても後者の意味合いだろうと、サンジは大きくため息を吐く。
ゾロにとって足の一本や二本、たいした価値はないのだろう。それでも世界一になれると信じている。
サンジはただ、震える拳をきつく握り締めた。
「おれァ、他人が悩んでる内容に興味がねェし、力になってやりたいとも思わねェ」
「ハッ、仮にも恋人に向かってひでェ言い草じゃねェか」
言葉尻に嘲笑を含ませる。シキやゾロみたいな人種のことは、とてもじゃないが理解できない。どうして野望のためにそこまでやれる。
両足を失うことがどれほどの代償を伴うのか、それが野望の前にどれだけ大きく立ちはだかる壁になるのか、目の前の男は何も分かっていない。本末転倒もいいところだ。野望を諦めなければならない結果になるのは目に見えている。

「それが厄介だって言ってんだ」
「あァ? 一体なんの話だ」
「てめェがうだうだしてたら気になるし、どうにかしてやりてェと思うだろうが」
サンジはへっ? と間の抜けた声を出した。
そんなサンジの様子にゾロは首を傾げると、だっておめェは他人じゃねェだろ、と当然といった風にふんぞり返った。
サンジはぽかんと口を開けたまましばらくゾロを見つめ、たまらず咽喉を鳴らす。笑いながらも胸が詰まる思いに、シャツの上からきつく胸を握りしめた。
他人じゃないというのは仲間だからか。それとも、恋人だからか。この際どちらでも構わないと、サンジは顔を歪ませる。ゾロはぎょっとしたように目を見開くと、おい、と困ったようにサンジを呼んだ。
「何も泣くこたァねェだろ」
「泣いて、ねェっ! クソ野郎! バカマリモ!」
サンジが慌てて目を擦っていると、突然、ゾロに腕を掴まれた。赤くなるぞ、そう至近距離で顔を覗き込まれて、ゾロと目が合った途端、動けなくなってしまう。
見るな、と口先だけで悪態をつくが、意志の強いその眸から視線を逸らせないのはサンジの方だった。
ゾロがゆっくりと、どこか挑発的に瞼を閉じたとき、抗えずサンジは唇を寄せた。ゾロの長い睫毛が誘うように揺れている。ちゅ、ちゅ、と音を立てて柔らかい唇に何度も吸いついていく。
何度も飽きず繰り返したあと、惜しみながら唇を離すと、慰めるように目尻にキスを落とされた。サンジは目を眇め、今度は荒々しくゾロの唇に噛みつく。
お互い背中を掻き抱くようにしながら、サンジはゾロのあられもない太ももに手を這わせた。足の付け根までを辿り、まだ立ち上がったままの性器に手を添える。ゆるゆると上下に擦り上げれば、ゾロの身体が跳ね上がる。
荒くなる呼吸を奪うように、赤く熟れた舌を絡め合った。ゾロの喉からは喘ぎになり損ねた甘い声が、ひっきりなしに零れている。
サンジが固く張り詰めた下腹部に息苦しさを感じていると、ゾロの手がベルトのバックルにかけられた。その手によって下着から性器を取り出されただけで、思わず達しそうになってしまう。
呼吸を奪い合うような口づけは息苦しさなどお構いなしに、ゾロの口内を舌で丹念に味わい尽くしていく。
ゾロに先走りを塗り込むようぐりぐりと指の腹で尿道を刺激され、サンジは息を詰まらせた。ゾロ、やべえって、サンジは快楽のあまり喉を反らせる。
誰でも見惚れてしまうであろう、美しく引き締まったゾロの腰に腕を回す。がぶりと喉元に噛みつかれ、宥めるようにサンジはゾロの脇腹を優しく撫でる。
ますます身体を密着させると、ゾロの手の上からひとまとめに二人分の性器を握った。一気に上下に扱けば快楽の波が押し寄せて、欲望のままもう一度唇を寄せ合う。イく、サンジが言えば、ゾロも限界を訴える。
ゾロの身体を押し倒し、同時に果てた。二人分の白濁がゾロの黒いベストを汚している。月明かりに照らされ、対照的なその色味が一層サンジを駆り立てた。尽くことのない欲に、自分でも呆れるほどだ。だが、それはゾロも同じだろうと、爛々と光を放つ目を見据え感じた。

「ゾロ、力抜けよ」
「うっ…あ、コック、」
吐精したばかりだというのに、サンジのそれは触れるまでもなくすでに首をもたげていた。ゾロの膝裏に手を差し入れて、もう一度足首の傷に唇を落とす。ゾロの中をゆっくりと割り開いていきながら、性器が粘膜に飲み込まれていく感覚に眉を寄せた。
まだ完全にほぐれていなかったのか、壁の中は少しきつい。ゾロの腹上の精液を指で掬い、そこを宥めるよう周囲に塗り込んだ。
ベストの襟をずらし、シャツの上からゾロの胸に舌を這わせる。サンジが今日一度も触れていないはずのそこは、それでもぷっくりと身を尖らせて存在を主張していた。唾液に濡れてシャツからそれが透けて見える。堪らず噛みつくと同時に、サンジは一息にゾロの中に性器を突き入れた。
身構える暇もなく奥を突かれたためか、一際大きな嬌声を上げてゾロの背が反り返る。
「んっ、あっ、あ」
「ゾロ、すげェ好き」
サンジはがつがつと腰を動かしながら、ゾロの両手にてのひらを重ねた。この身体はゾロだけのものではないのだということを、サンジは分からせてやろうと思った。
もちろん、サンジのものでもあるが、仲間たちのものでもある。ゾロがまた自分を傷つけるようなことがあれば、皆が泣くことになるのだ。サンジ一人泣いただけで困惑しているようなゾロには、絶対に耐えられないだろう。
サンジは霞む視界にまばたきを繰り返す。一度視線を窓の外に向けて、意味もなく鼻を啜った。
切なげな声を上げながら、重ねられた手をぎゅっと握り返したゾロは、そんなサンジの様子を見て困ったように眉尻を下げた。
ぴたりと身体を密着させて、愛を囁きながら幾度となく唇を寄せ合う。突き上げにくいこの体勢さえも、サンジは楽しんだ。サンジの腹にゾロの張り詰めたものが擦れ、ゾロはびくびくと痙攣に近い動きをする。
「コッ、ク…!」
「…っ、どう、した、ゾロ」
「れも、てめェが、」
耳たぶを啄ばまれながら続けられたゾロの言葉に、サンジは顔を真っ赤に染めた。奥に突き入れた瞬間、ゾロの中がぎゅうっと窄まり、快楽に負けて二度目の精を放つ。すぐにゾロも背をしならせて、ぐしゃりと顔を歪めた。
それでも、ゾロは潤んだ眸でまっすぐにサンジを見据え続ける。運良く失わずに済んだその足は、押し寄せる快楽の波をごまかすよう何度も床の上を滑った。


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