私を上回る存在

「……だから、悪い」

「さすがにもう、理解したよ」


守らなきゃいけねえヤツができた。
だから、この関係を終わりにしたい。




五回目の説明を終え、ようやく頭では理解できた。


このまま背を向け去ってしまう、そう思ったが、私の返事を待つのがずるく感じる。


下級戦士なのに強くて、みんなにバーダックさんと慕われる、そんな彼に惹かれたのは遅くなかった。


告白したのは私の方で、レベルの高い星を制圧しに行く時よりも緊張して、勇気を振り絞り好きと伝えたの。
もちろん突然ではなく、コンタクトを取り続けてたくさんおしゃべりしたし、お酒を一緒に呑む事もたくさんした。


ダメ元な弱気もあったけど、ほっぺたを抓ると痛みも感じて、夢じゃないって事をバーダックの目の前で確認したっけ。


チームは違うから、会える時間は限られていた。だから数少ない貴重な時間を、濃い時間にしようと頑張ってきたんだよ。

景色が綺麗な場所へ出掛けた事もある。
組み手もした事があったね。
肌を重ねた事も、あるよ。


バーダックと過ごした時間全てが初めてな事ばかりで、顔が真っ赤になったり、心臓が爆発してしまいそうなぐらいドキドキしたんだ。




でも日に日にそんな事がなくなっていった。
バーダックは私を見てくれなくなった。

その視線は、別の子に注がれている。

私じゃない、別の女の子に。



フられると、思い出全てを疑っちゃうや。
私が告白をして、バーダックがフった。

何だか、元からバーダックに愛されていなかった気がして、変だよね。

バカみたいだよ。綺麗な思い出は綺麗に残したいのに、自分で壊すなんて。


「オレなんかより良いヤツは他にもっといるさ。ナマエを大事にしてくれる、オレなんかより良いヤツが」

「じゃあバーダックは、その言葉通りってことなんだね」




私なんかより良い人が居た。だからバーダックは、その人の所へ言ってしまうんだ。




聞き飽きてしまった本当に最後の“ごめん”を言うと、ついにバーダックは背を向けた。

歩き出す彼に待ってを言えば、その足は止まるかもしれない。
まだ大丈夫、もう言おうか、まだ間に合う、声は届く。



行かないで。

ひとりにしないで。

バーダックより良い人なんていない。




小さくなる背を掴むように手を伸ばし、口を開く。

だけど声を失ったかのように震える唇だけが動き、頬には雫が伝っていた。


潤んだ瞳で前が見えない。想いどころか、声も届かない。





いつかきっと、二人におめでとうと祝福するから。
ちゃんと明るく、笑ってみせるから。


だから今だけ、今だけ、嫌な私を、許して。



「お願い。帰ってきて。好きだよ、バーダック」


悲しさと悔しさで溢れた涙は、虚しく地面へとこぼれ落ちた。


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