足して割ってダレのもの?

ポタラでの合体は、これしかない時用の最終手段。
強さは確かに半端無いけど、元に戻れないってのが最大の難点だからね。

だから本当に必要な時しか使えないのに……


「なんで貴方が存在してるんですか」

「いやー、ちょっと揉め事があって」


二重に重なった声。でも私の前に居るのは1人の男性。
と言うか、ベジットさん。
そして彼こそが、平和なこの世界に存在すべき人間ではない人だ。


「その言い方は酷いだろナマエ」

「事実の事だからいいんです。それより、どうして合体したんですか」

訊きたいことは山ほどあるがとりあえずこの質問からすると、彼はよくぞ訊いてくれたと言わなくても分かるぐらいパッと明るい顔になった。これは間違いなく悟空さんの部分であろう。ベジータさんだったらとか思うけど、それはそれでシャレにならないしね。


「2人で飯食っててよ、途中で喧嘩したんだ。んでたどり着いた答えが合体って訳さ」

かなり大ざっぱな答えきた!
いい歳した小父様サイヤ人×2÷2=バカな人ですか!?
言葉足らなすぎて、絶対伝言ゲームで変な言葉を伝えるキャラですよ間違い無く!!
しかも2人で飯って…結局は仲いいですよね本当に。
それでえっと、要約部分に肉付けしなきゃだよね。

ご飯を一瞬に食べてた悟空さんとベジータさん。その時に残ったおかずのせいで喧嘩が勃発し、じゃあ2人が1人になれば喧嘩せずに済むんじゃないかと喧嘩の最中に気づいた悟空さん。納得したベジータさんだったがフュージョンのポーズはしたくないと駄々をこねた結果、ポタラ後はドラゴンボール頼りで何とかしてもらおう。ってなったのだけど、肝心のドラゴンボールは半年待たなくては使えないと合体してから知ったらしい。
要するにただのバカって事よね。

「流石頭しか役に立たないナマエ。話が早くて助かる」


人がせっかく悩みの相談訊いてやってるってのに、何だそのムカつく台詞は!ベジータさんだろ。どうせベジータさんなんだろその性格は!!


「て言うか、ポタラって持ってましたっけ?」

「大界王神様のじいちゃんにもらったさ」

「へぇ」

「但し条件付きだった」


悟飯くんから聞いたけど、界王神様って人は、私達地球の神様、デンデくんよりも、銀河をそれぞれ担当する界王様って人達よりも偉い、何かもうマジガチヤバイ感じの人達らしい。
界王様って人でもお目にかかれない程なのに、悟空さんやベジータさん、悟飯くんはその界王神様に認められてるみたいなんだよね。
だからその凄い人からの条件ってのは、さぞかし無理難題だと思うんだけど…

「それでその条件って?」

「戻ってから教えるさ」


特に興味はないし、まぁいいか。


「何か飲みます?コーヒーや紅茶……ってタイプじゃないですよね。麦茶でいいですか?」

「あぁ。悪ぃな」

久々にお泊まりしてるカメハウス。でも今クリリンさんファミリーはお買い物中だし、亀じいとウミガメさんも留守中だからここには私とベジットさんしか居ない。よって、お持て成しをするのは必然的に私となるわけです。


「それよりベジットさんの事、チチさんやブルマさんはご存知なのですか?」

「その事なんだが……」


麦茶を注いだコップを差し出せば、ベジットさんは目を泳がせて困った様子を見せている。となるとつまり……


「パパ!」 「お父さん!」



小さな突風が2つ、物凄い速さでカメハウスにやって来た。ベジットさんを父親と呼ぶ子供達と言えば勿論、トランクスくんと悟天くんだ。


「放せよ悟天!オレのパパだぞ!」

「違うよ!ボクのお父さんだもん!」

「ちびっ子達に片腕ずつ引っ張られるなんて、ベジットさんも隅に置けませんね」

「いでっ!こら引っ張んな!ナマエ、見てないで助けてくれ」


“お父さんは宇宙最強”
というのには憧れる。
だからこの子達は、そんな父親2人の混ざった強い気に惹かれてここまで飛ばしてきたんだろうね。何だか微笑ましいな。


「オレはカカロットでもベジータでもない!!」

「えぇ、オレのパパでしょ?!」

「お父さんはボクのお父さんだよね?!」ふむふむ。どちらとも言っている事は確かに正しいですな。ベジットさんは1人の人間の“ベジットさん”である。でも息子達からしたら、片割れの“父親”でもあるんだし……難しい問題ね。あ、そうだ。こんなジョークはどうかな?


「ベジットさん、私のお父さん代わりになってよ」


暑い夏には冷たい麦茶で喉を潤そう!そしてジョークを言っちまったぜ☆
かなり軽〜いジョークだからさ、早く、突っ込んでよ。


「あれ、ベジットさんは?」


目の前で息子達とジャレていたベジットさんが突然消えていて、さっきまで腕に絡んでいたのに、今は見えない腕に絡んでいる状態の息子達が私よりちょい上に視線を送っているのが分かった。
それより、何か重いんだけど。


「よし、今からオレはナマエの父ちゃんだ」

「…はっ?」

「じゃあまず、親子なんだから裸の付き合いって事でナマエ、風呂はいるぞ」

「いやいや意味分かんない!しかもお風呂ってなんですか!このスケベ親父!!」

「ナマエ、父親に向かってスケベとはなんだ。それに、いくら可愛いくても娘だ。裸を見たって発情はしねえよ。軽くムラっとするけど」

「完全に矛盾してますよそれ!」

「んだよ、もう思春期か?恥ずかしがるにはちと早いんじゃねえの?」



後ろから抱きしめられて、頭に頭を乗っけられてるし……。
確かに私は両親を亡くした。だからたまに親が恋しいと思う時はあるけど、あるけど……


「実の息子達を前にこんな事していいわけがありません!だから離れて下さい!」

「だが今は“ベジット”だ」



やっと離してくれたと思ったら、今度は無理やり正面を向けられて顎をくいっと上げられる。
そしたら近くにベジットさんの顔がるから、私は恥ずかしさのあまり視線を逸らした。でもって心臓が速いのは、こういったムードに慣れてないからです。


「ナマエ、こっち見ろ」


ちらりと視線を戻す。が、さっきよりもベジットさんが近いのは多分気のせいなんかじゃない。吐息が鼻の先に当たってくすぐったいとか考えてる余裕もないです!


「好きでいられるのはこの姿だけだからよ。悪ぃ。許してくれ」


人差し指でそっと唇をなぞられたら、次の瞬間私達の距離感はゼロになっていて、その時に見せたベジットさんの表情があまりにも切なそうだったから私も目を瞑り…………






思いっきり突き飛ばした。



「痛ってー。急になにすんだよ!」

壁にぶつかり座り込むベジットさんにあーだこーだと文句を言うが、彼は反省の色を見せずけろっとしてやがる。
となれば、私なりの仕返しをするしかないか。



「トランクスくん、悟天くん。すっごーく面白いもの見せてあげるからさ、私をその場所へ運んでくれるかな?」


ぽかんと突っ立ってる2人に問い掛ければ、“面白い”という言葉に反応してか息を吹き返し、すぐにいいよと承知を得て私達はベジットさんを置いてそのある場所へと飛んでいったのだった。




* * * * *

「いっつもそうだよ!2人は後先考えず好きな事ばっかして!!」

「あんた達のそういった無神経なところが周りに迷惑掛けてんのよ!!」



宇宙最強戦士ベジットさんが、2人の女性を前に、正座をさせられてこっぴどくお説教されたのはあの出来事から数日後の話。
チクったのは勿論私だけど、後ろでその光景を見る子供達と一緒に楽しませてもらった。


でもさ、純粋な乙女の唇を奪ったのにこの弁償は安いと思うけど、ちょっとだけキュンとしたから免除してあげるんだからね。感謝しなさいよ、ベジットさん。

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