おとぎ話のお姫様ってさ、眠っちゃうけど、王子様のキスで目を覚ますんだよね?
王子様が、眠っているお姫様に…。
じゃあ、今の状況に無理やりぶち込んでみようか。
「ジッとしてろよ」
「…………………」
ベジータさんに押し倒されている私。
えっ?まずここでツッコミたいって?
じゃあ軽く説明するからついてきてよ。
修行を終えたベジータさんは、汗を流すためシャワーを浴びて、お風呂上がりにぷはーといきたいじゃん。ベジータさんは冷蔵庫に入ってたジュースをごくりと飲んだらしいんです。
そんなところを、遊びに来てた私がたまたま通りかかったら
「ナマエ!!」
押し倒されました。
でも話は続いてね。
実はあのジュースに惚れ薬が混じってて、一番最初に見た人に惚れちゃうらしいんですよ。
ブルマさんもその事をうっかり忘れてたらしくてさ、治すにはその2人がキスをしなくちゃいけないんだとよ。いやー、愉快愉快
「な訳ないでしょ!!」
「ごめんなさいねナマエちゃん」
「こらこら笑ってる場合じゃないですよブルマさん!目の前で旦那が小娘を無理やり抑えてキスを迫ってるんですよ!止めなくていいんですか!?」
「元々悪いのは私なんだし、たかがキスひとつでどうこう言わないわよ。ましてや相手はナマエちゃんだもの。じゃあ邪魔者は退散するわね。どうぞごゆっくり〜」
大人の余裕ってやつですか!?
つかブルマさん、明らか楽しんでたでしょ!
「正気になって下さいよベジータさん!」
「オレは正気だ!」
「絶対間違ってる!!」
どこのおとぎ話にも、王子様を元に戻すため、王子様が無理やりにお姫様とキスするなんて話はないぞ!
それに第一、
「どうして私のファーストキスが妻子持ちのアラフォーなんですか!!」
「ほぉ。ならば光栄に思え。直々にオレからお前にしてやるんだからな」
「ちょっ、近いです近い!顔近いです!!」
両腕は片手でがっちり抑えつけられていて、脚も変に絡められていて動けない。
むしろ、サイヤ人相手に身動きしようなんて考えが無謀なんですよ。
「パパとナマエお姉ちゃん、何してるの?」
「……トランクスくん」
ここで天使の救世主きたーー!!!
でもごめんね純粋のチェリーボーイ。キミのパパとこんな状況で。失敬失敬
「パパ、ナマエお姉ちゃんが痛がってるよ!離してあげてよ!!」
「邪魔をするなトランクス!!」
トランクスくんが吹っ飛ばされたー!!!
ちょっ、息子を片手で吹っ飛ばすっておまっ!!
父親としてどうなのよ!!
「ベジータさん!」
「ナマエは黙ってろ」
こっ、怖い…。
ベジータさんのこの目は久々に見た気がする。
でも、だからってそれを息子に向けるのはおかしいよ。
「オレを邪魔するやつは、例えトランクスでも容赦はせん」
ベジータさんが立ち上がり、解放されたかと思ったらぐっと頭を胸に引き寄せられた。
つまり、未だ私には自由がありません。
「覚悟しろトランクス」
左手で私の後頭部を胸に引き寄せていて、右手をトランクスくんに向けると気を溜めだした。
トランクスくんはいったい何が起きてるのか理解できておらず、体を動かす気配はない。
そんな息子に対しても、彼は本気だ。
「ベジータさん!!」
ベジータさんが意味もなく、トランクスくんを傷つけることは私が許さない。
だから私はベジータさんの顔に手を添えて、勢いに任せた。
目を覚まして王子様。
「………んっ……んんんっっ!!」
唇を重ねて3秒ほど。何故私はまだキスをしているんだ!
あぁ、ベジータさんが後頭部を抑えつけてるから離れないのね。
「ぷはっ!…べ…ベジータさん……」
やっと離れたのは10秒過ぎてから。私は必死に酸素を吸い込み息を整えるが、ベジータさんは息ひとつ乱していなく、トランクスくんはこの光景を見て顔を真っ赤に染めている。
「ベジータ…さん…?」
「貴様も随分と大胆になったな」
「……あのー、記憶、残ってますか?」
「何の事だ?」
「………ほぉ。残ってない、か。なるほどなるほど。うん。それならそれでありがたいね」
ポカンとしてるベジータさんに私は胸を撫で下ろした。
だって、覚えてない方が都合いいじゃん。それに、それなら私のファーストキスはチャラになるもんね〜
「えっ、じゃあナマエお姉ちゃんはどうしてパパとチューしたの?パパの事、好きじゃないんでしょ?」
「なにっ?!好意も持っとらんヤツに易々と…なんて下品な女だ!!」
「あんたが抑えつけたんでしょうに!でもって子供は首を突っ込むな!!」
悪者は私なの?私なんですか?!
むしろ一番の被害者は私なのに、どうしてそんな目で見るんだよこの親子は!!
「ねえナマエお姉ちゃん!」
「詳しく説明しろナマエ!」
あぁもうめんどくさい!
男がガタガタ言うな!!て言うか、喉乾いた!!
「要するにですよ、私はベジータさんに……」
あっ、あれ?体が熱いぞ。冷蔵庫から取り出したし、確かに冷えたドリンクを飲んだのに。
それに鼓動も速くなってる……。
「おい、顔が赤いぞ」
顔が赤い?ベジータさんが心配してくれるぐらいだから、かなり赤いのかな?
でも、ベジータさんが私の事気に掛けてくれるなんて……嬉しい。
「好き、大好き……王子様」
もう、どうにでもなってしまえ
「おいナマエ!くっ付くな!!」
「どうしちゃったのナマエお姉ちゃん!?」
「あらあら。ナマエちゃんまで飲んじゃったのか」
「どういう意味だブルマ、説明しろ!!」
「うふふ。つまりそういう意味よ。行くわよトランクス」
この後のことは、正直何も覚えてません。
全て知っているのは、ベジータさんだけです。
(愛してます!私の王子様!!)
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