ウチの嫁さんは 


〜切原赤也さん家の場合〜


久々に早く帰れる。
そう連絡すれば、彼女は嬉しそうに「じゃあ今夜は焼き肉ね」と俺に伝えた。
夕日が傾く時間に帰れるのは滅多になく、今日の残された時間はナマエと過ごせると思うと、足は自然と早くなる。


大人になって、まだテニスを続けてて。プロになった俺は、ナマエと過ごす時間が少ないのだ。
大会前は、日にちが変わった頃に帰宅する事もあるし、合宿とかで家に帰らない時だって少なくはない。

それでも、そんな俺を笑顔で待ってくれるナマエだから……


「ただいまー」


テニスバッグを肩から下ろす最中にバタバタと駆け寄る音が響き、エプロン姿のナマエが笑顔で


「かめはめ波ーー!」

と、お馴染みのポーズをとるからさぁ大変。
こんなの今までで一度も無かったから、どうリアクションしていいのかが分からない。
普段なら「お帰りなさい」と言ってくれるのに……


唖然と中途半端な形で固まってる俺を見て

「なにっ!私のかめはめ波が通用しないだと?!貴様は一体何者だ!!」

と、多分ノーリアクションだった為用に考えていたであろうセリフをスラッと続けるから、とりあえず「ただいま」って事でキスをし茶番劇を強引に終了させた。

見る見るうちに赤くなるナマエはまだまだウブなご様子。でも嬉しそうに笑うそんな彼女を見れば、やっぱりこの人を嫁さんに貰って良かったと、そして俺の目は狂ってなかっと、そう思ってしまう。


「つか、さっきの何だったんだよ」

「赤也のリアクションが知りたかったの。普段は遅かったり、疲れてたりしてて出来なかったから」

「ふぅん」


コップに注がれたお茶を飲めば「真田くんはね、撃ったら倒れてくれたんだよ」と言われて有り得ない光景がパッと思い浮かんだ為に、含んでいたお茶を思いっきり吹き出した。

謝りながらテーブルを拭きつつ考えてみると、そういや真田さんは父親になったんだっけと思い出す。今とあの頃は比べものにならないぐらい、優しい顔になった真田さんは、やっぱり我が子の存在が大きいからなのだろうか。


「何言ってんの。元々真田くんはいい人じゃん」


真田さんはいい人……。
そりゃ確かに、ただ単に、俺の中では怖いってイメージが強かっただけであり…


「結婚式は、笑えたよな」

「真田くんにとって、赤也は特別だったから」


結婚式の日に、誰よりも涙を流したのは多分真田さんだった。
あの時は本当に面白くて、それと同時に、嬉しかった。


「赤也も、まだまだ真田くんの事見習わなくちゃね」

「……だな」

「………何よその目」


ナマエのセリフにいいことを思いつきニヤリと笑って見せれば、感づいたのか、身体を守るように小さく縮こまる。
それでも俺は口角が上がったまま。真田さんを見習えと言ったのはナマエの方なのだから。


「前に、子供欲しいって言ってたよな」

「……そりゃ、まぁ」

「俺は今日みたいに、早く帰れる日は滅多にない。つまり、ナマエがひとりぼっちの時間が長いって事だ。だからさ、なっ」

「でも赤也!」

「大丈夫大丈夫。俺は明日午後からだし、何たってお前に触れたくてしょうがないんだよ。だから今日から頑張ろう」


全部本当の気持ち。
でも強いて言うならば、やっぱりナマエに触れたくてしょうがなかった。
でもよ、俺たちの間に子供が出来れば、ナマエがひとりぼっちじゃなくなるって事だよな。俺って嫁さん想いのいいやつだ!!









ってあれ?
もし子供出来たら、今以上に触れる時間、減るんじゃね?


「……そん時に考えりゃいいか」

すやすやと気持ちよさそうに眠るナマエにそっと触れて、俺も眠りについたのだった




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