after4
「なまえ……いい加減起きてくんない」
「いややあー……」
ソファに座る俺の膝の上に我が物顔で寝転ぶなまえ。テーブルの上にはスーパーで買ってきた惣菜と、空の缶ビール1本と飲みかけの缶チューハイが1本。
俺の家で宅飲みを始めて1時間も経っていない。チューハイ1缶を飲み終えないうちになまえはすっかり酔っ払ってご機嫌だ。たった4パーセントなんですけど。
「倫太郎くんの膝、筋肉質で硬い……」
「それならクッション使いなよ」
「いーやーやーー」
勝手に人の膝を占領しといて文句を言ってくるなんて随分理不尽だ。そりゃなまえの膝に比べたら硬いに決まってる。鍛えてるし。
気持ち悪くなるような酔い方じゃないのが幸いだけど……これはこれでタチが悪い。
「トイレ行きたいんだけど」
「ふふ、だーめ」
「ここで漏らしていい?」
「あかーん」
トイレに行ってもダメだし漏らしてもダメらしい。どうしろって言うんだ。俺は早々にこの場を動くことは諦めて2本目の缶ビールを開けた。酔っ払ったなまえを見ながら飲む酒も悪くない。ご機嫌な今のなまえはブラ紐が見えてることも、スカートが捲れて太ももが見えてることも気にならないらしい。
「ふふ、いつも倫太郎くん意地悪するから、今日は私が意地悪してん」
「……ふーん?」
「あ! スカートめくった!」
「見たことないパンツだ」
「えっち!」
無防備なのをいいことにスカートを捲ったら真新しい下着が見えた。文句を言われたけどこれは気にしなくていいやつだ。
「俺のために新調してくれたの?」
「べ、別に……」
「俺に見て欲しかったんでしょ?」
「……」
「ね?」
新しい下着を俺と会う時に着けてきてくれる意味がわからない程馬鹿な男ではないし、そんななまえのいじらしい努力を無駄にするつもりは微塵も無い。
こういう時のなまえの沈黙は肯定だ。さっきまでふにゃふにゃしてたくせに急に大人しくなってしまった。
「倫太郎くん……白、好きやと思って……」
「……うん、好き」
なまえはこういう煽り方を天然でしてくるから本当敵わないと思う。半分まで飲んだ缶ビールをテーブルに置いて、アルコールと羞恥心で赤くなったなまえの顔にニヤけた唇を近づけた。
( 2018.10 )
( 2022.5 修正 )
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