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06

 
「は!? 告白せんかったん!?」
「なんか普通に楽しくて忘れてた」
「アホか!」

帰宅した途端侑がデリカシーもなしに根掘り葉掘り聞いてきた。告白くらい俺のタイミングでさせろや。何でお前に文句言われんとあかんねん。

「でもな治、ネットには3回目のデートがベストタイミングて書いてあったで」
「お前ネットの情報鵜呑みにすんのやめえや」

侑なんかと話しとったらせっかくの幸せ気分がどっかいってまう。さっさと風呂はいって寝よ。そしたらまたみょうじさんの夢を見られるかもしれない。


***(夢主視点)


「幸せだったあ……」

寮の自分の部屋に入って即、ベッドにダイブして枕に顔をうずめた。目を瞑って、今日一日の幸せな時間を思い出す。
治くんは私服もかっこよかった。流行とかあまり詳しくないなりにオシャレしたつもりだったけど、私の服装ダサいとか思われなかったかな。やっぱりスカートにすれば良かったのかな。気合い入れすぎてるって引かれたら嫌で、間をとってスカーチョにしてしまった。女の子らしさをアピールするんだったらスカートだったのかもしれない。難しい。
食べすぎて引かれなかったかも心配だ。治くんオススメのクリームパンはすごく美味しかった。当たり前だけど治くんは私よりもたくさん食べていた。あんなに食べても太らないなんて羨ましい。ふふ、食いしん坊さん。可愛いな。

「……」

治くんに握られた手がまだ熱い気がする。お風呂に入っちゃうの、勿体ないなあ。


***


「お。みょうじさん!」
「あ……侑くん」
「正解やで〜」

放課後、明日の宿題のプリントを教室に忘れたことを思い出して、休憩中に部活を抜け出して戻ってきたら侑くんに会った。さすがに見分けはつくけどやっぱり急に声かけられるとびっくりする。

「袴かっこええなー!」
「ありがとう。どうしたの?」
「んー? そや、みょうじさんこれ治に渡しといてくれん?」
「え?」

いいこと思いついた、という感じに笑って渡されたのは学校指定のジャージ。治くんに……ということは、これは侑くんじゃなくて治くんのジャージらしい。だとしたら何で私に渡すんだろう。今部活中だから一緒にいるんじゃないのかな。

「あいつちょっと怪我して今日整体行っとんねん」
「え!?」

怪我なんて知らなかった。教室では普通に見えたのに。大丈夫なのかな……。

「大丈夫やって。ちっと捻ったかなーくらいやから」
「本当?」
「おう」

大丈夫ならいいけど、その少しが大きな違和感になるのはきっとどのスポーツも同じだろうから心配だ。

「借りたジャージ机に置いとけって言われて持ってきたんよ」
「なるほど」
「けど机になんか置いといたら誰に何されるかわからんやん?」
「……うん?」
「だからみょうじさんに預けとけば安心やなーって!」
「え……」

どうしよう、侑くんの言ってることがよくわからない。

「そんじゃよろしく〜」
「あっ……うん」

私が納得する前に侑くんはジャージを押し付けて行ってしまった。なんとなくその足取りは軽いように見える。
私の手には治くんのジャージ。それを改めて認識した途端、ジャージを持つ手に熱が集まったような気がした。

「……」

好き。治くんのことが好き。行き場のない気持ちを腕に込めて、ジャージをぎゅっと抱きしめた。治くんのにおいが鼻をくすぐってドキドキした。

「……みょうじさん?」
「!? お、治くん……!」

とんでもないところを治くんに見られてしまった。


***(治視点)


整体に行くためにバス停まで来たところで財布を教室に忘れたことに気がついた。まだ時間に余裕はあるから軽く走って教室まで取りに戻ったら、そこにみょうじさんがおった。

「みょうじさん?」
「!? お、治くん……!」

思いがけず会えてテンションが上がる。袴姿、かっこええなあ。
俺が声をかけるとみょうじさんは予想以上に驚いて、顔を赤くした。声をかけられただけの反応にしては違和感を感じる。てか、みょうじさんが持ってるのって……

「それ、俺のジャージ?」
「!!」

侑が勝手に借りてたから机の上置いとけって言っといたのに、何でそれがみょうじさんの腕の中にあるんやろか。そして俺の見間違いでなければみょうじさん、俺のジャージ抱きしめていたように見えた。

「ごっ、ごめんなさい……!!」

みょうじさんの反応を見る限り多分見間違いじゃない。俺のジャージを抱きしめたのは事実で、そんな場面を俺に見られたから顔を赤くしてるってことだと思う。その意味を考えたら気持ちばかりがはやってしまった。

「き、気持ち悪いよね。本当にごめんなさい。洗って返すから……」
「嫌や」
「!」
「せっかくみょうじさんが触ってくれたのに勿体ない」
「えっ」

かなりきもいことを言った気がするけど、紛れもない俺の本心や。

「……治くんは優しいね」
「多分勘違いしとるよ」

きっとみょうじさんは今の俺の言葉をフォローしてくれたもんだと思ってるんだろう。違う、下心だらけの本心が出てきただけや。もうきもいついでに全部、言ってしまおうか。

「俺、夏休み明けたくらいからずっと朝練してるみょうじさんのこと見とった」
「!」
「朝練してるみょうじさん、凛としてて綺麗やと思った」
「私はそんな……」
「うん、知っとる」
「!」
「実際話してみたら、ふわふわした普通の女の子や」
「……私、多分治くんが思ってくれてるようないい子じゃないよ」

みょうじさんは声を震わせて俯いてしまった。いったい何を言いたいんだろうか。みょうじさんを「いい子」なんて適当なくくりにするつもりはないけど、「悪い子」では絶対にないと思う。

「今だって、治くんの……ジャージ、抱きしめちゃったし……」
「ええよそんなん」
「そ、それだけじゃないの!治くんのこと、夢に見ちゃったりもして……ほんと気持ち悪くてごめん!」
「そんなんやったら俺、夢ん中でみょうじさんとチューしとる」
「えっ」
「……もっとすごいこともしとる」
「え!?」

顔を真っ赤にしてされたカミングアウトは俺に比べれば可愛らしすぎるものだった。ていうかみょうじさんの夢の中に俺が登場してることがめちゃくちゃ嬉しい。

「俺のがきもいやろ」
「ううん、嫌じゃない……」
「!」

夢の中だとしても俺とのキスが嫌じゃないってことはつまり、そういうことでええんやろか。告白とか、前もって計画練ってするものだと思っていたけど、この状態で言わない方が無理や。

「あー……今言ってええ?」
「わ、私も……言っちゃいたい、かな」
「却下。俺が言う」
「えっ」

こういうのは男からするもんやろ。確信が持てたところで言うなんてズルいとは思うけど。

「好き。付き合ってください」
「……うん。私も好きです」

俺の人生初の告白にみょうじさんははにかんで頷いてくれた。夢みたいや。……夢だったらどうしよ。こっそり自分の腕をつねってみたらちゃんと痛かった。よかった。
これからひとつずつ、俺が見た夢を正夢にできたらええな。名前ではもう呼んでもらってる。あとはキスして、水着姿を見て、いずれはそういうことも……なんて、付き合えたばかりでこんなん考えたらあかん。

「ジャージありがと」
「本当に洗濯しなくていい?」
「されてたまるか。今日抱きしめて寝る」
「も、もう!」

顔を赤くしたみょうじさんから受け取ったジャージは温かくて、俺のなのにいい匂いがした。今夜はとびきりいい夢が見られそうや。



( 2018.2-5 )
( 2022.7 修正 )

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